2022 Fiscal Year Annual Research Report
防災リテラシー格差の発生・維持メカニズムの解明とその縮減方策の検討
Project/Area Number |
22J15954
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤本 慎也 同志社大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 災害社会学 / 防災リテラシー / パネル調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、避難行動といった安全確保行動の実行を規定する鍵要因としての防災リテラシーに注目し、人々の間で防災リテラシーの格差が発生しているか、またその格差発生の規定要因は何かについて計量的に明らかにすることを目的としている。 格差発生の検証に不可欠である複数時点でのデータを得るため、2022年3月(第1波)および2023年3月(第2波)に全国の20~60代男女を対象としたウェブ調査を実施し、2時点のパネルデータを収集した。 今年度はまず、どのような層の間で防災リテラシーの格差が見られるのかを探索するため、第1波調査データを用いて社会的属性や災害に関係する諸経験との関連分析を行った。その結果、高めの防災リテラシーを備えているのは男性、高年齢層、世帯主、高収入層、長期居住者、災害ボランティアや自主防災組織の経験者といった特徴を有している層に偏っており、特定の層の間に防災リテラシーの高低が存在していることが明らかになった。 また、第1波、第2波の両調査データを用いて、先有的な防災リテラシー(第1波調査時の防災リテラシー)の水準によって、防災リテラシーの向上が期待される防災体験活動・支援活動へのその後の接触(第1波調査以降の諸活動関与)に偏りが生じているかも検討した。結果、先有傾向として高水準の防災リテラシーを備えているほど、災害ボランティアへの参加、被災地への募金・寄付、被災地への旅行、災害ミュージアム・伝承館への訪問、防災訓練への参加といった活動に参加・関与する傾向にあった。以上の結果から、もともと高水準の防災リテラシーを備えている層はさらにその後の防災体験活動・支援活動へ接触しやすく、反対に防災リテラシーの水準が低めである層は接触しにくいという傾向が実証的に示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、主に第1波調査データに基づいて、どのような層の間で防災リテラシーの差が存在するかを検討してきた。1時点の横断的データでは、このように個人間の差を検討するにとどまるが、格差の動向(拡大・縮小・維持)を捉えるためには、複数時点の縦断的データを用いた時点間比較によって個人内の変動まで射程に入れる必要がある。そこで、今年度末(第1波調査の約1年後にあたる時期)には第2波調査を実施し、防災リテラシーの変動を追跡するパネルデータを取得できた。このパネルデータは分析途上であり、現時点で明らかになったのは上記で報告した一部の分析結果にとどまるが、次年度のより詳細な分析に向けて、データを整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きパネルデータ分析を実施する。縦断的データという特性を活かして防災リテラシーの経時的変化を分析し、格差の発生状況を把握する。その際、防災リテラシーの格差がいかなるメカニズムによって生じうるのか、その格差発生過程を仮説化したうえで検証を行う。そのうえで、格差を生む構造的背景や、格差を再生産させずに防災リテラシーを向上させる戦略に関する示唆を得る。
|