2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on Subtle and Ambiguous Phenomena of Discrimination and its Countermeasures: Using Microaggression as a Key Concept
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20J11996
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
朴 希沙 立命館大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロアグレッション / 差別研究 / 心理社会的支援 / 在日コリアン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代日本社会での日常における曖昧な被差別体験(以下、マイクロアグレッション)の実態の一端を明らかにし、その対応策を探ることにある。 2021年度は、2020年度に集めたインタビューデータやマイクロアグレッションに関する国内外の論文をもとに論文の執筆と投稿を目指していた。しかし、度重なる新型コロナウイルスの蔓延とそれに伴う保育園の休園が重なり、育児と両立させながらの論文執筆に遅れが生じてしまった。また、一度論文を書き上げたものの、研究協力者の実体験を多く取り上げたために論文の分量が予定より大幅に超過してしまった。日本におけるマイクロアグレッションの実態を出来るだけ具体的に伝えるべく、生のデータを反映した論文に仕上げたいと考え、現在は投稿先について改めて検討中である。 一方、2021年度には学会やシンポジウム、研究会等の多くがオンラインで開催されたため、育児で家を離れることが難しい時期にも参加や発表を行うことが出来た。具体的には、日本心理臨床学会大会、日本質的心理学会大会、多文化間精神医学会大会、上智大学および国際基督教大学主催の「差別と心理学:マイクロアグレッションを理解し日本社会の変革につなげる」のシンポジウムにおいて、自身の研究について発表し、議論を深めることが出来た。特にこの過程で海外のマイクロアグレッション研究者の研究から多くの刺激を受けた。また、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンターが主催するマイクロアグレッション連続講座にも登壇し、『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』の内容を紹介、主催者や有識者の方々と議論を深めてきた。 以上のように2021年度は論文投稿には至らなかったものの、調査結果の整理と論文執筆、学会発表やシンポジウムおよび研究会での発表を通して、自身の研究について国際的、多角的な視点から考察を深めることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、本研究は大きく2つの柱から成っていた。ひとつはマイクロアグレッションの実態調査とその日本的特性の検討である。もうひとつは、マイクロアグレッションが生じた際のマジョリティの認識とその変容過程について、日本人の当事者研究グループに対するインタビュー調査と参与観察を通して明らかにしようとするものである。この2つをまとめあげ、統合的な日本版マイクロアグレッション研究の端緒を拓くことを目指していた。 しかし、2020年度から開始したインタビュー調査は、2020年9月に第一子が誕生したことにより一時中断することを余儀なくされた。また度重なる新型コロナウイルスの蔓延とそれに伴う保育園の休園が重なり、インタビュー調査及び論文執筆が予定よりも遅れてしまった。しかしその過程で学会等での発表の機会に恵まれ、研究課題に対する考察を深めることができ、その結果、マイクロアグレッションの既存のテーマに対し、新たなテーマを生成し分析する等マイクロアグレッションの日本的特性の一端を明らかにしつつある。 一方マジョリティ性に関する研究では、当初インタビューおよび参与観察を予定していたグループが、新型コロナウイルスの蔓延を受け活動を中止しているため、調査が行えていない状況にある。また今後もグループ再開のめどが立っていないため、調査は困難であることが予想される。このような状況を受け、マイクロアグレッションの実態調査を発展させ、その対応策について新たな角度から考えられるような新たな研究テーマの再設定を計画している。具体的には、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンターに協力を得て、マイノリティ当事者の悩みにいかにマイクロアグレッションが関わり、どのような心理社会的支援が必要になるのかを臨床心理学の知見と実践も取り入れながら探っていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は3月に第二子を出産したため、上半期は研究を行うことが難しい状況にある。しかし下半期からは保育園の入所を通してまず研究に取り組める環境を確保する予定である。 その上で、2022年度はこれまでのデータからマイクロアグレッションの実態調査の結果とその日本的特性を分析した論文の完成と投稿を目指したい。質的な分析を通して研究協力者の生の声を十分に活かした論文を完成させ、日本質的心理学会学会誌に投稿する予定である。 またマイクロアグレッションに対してどのような心理社会的対応が可能になるのかを探るため、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンターに協力を得て、参与観察とインタビュー調査を行う予定である。具体的には、これまでのカウンセリング実践について支援者にインタビューを行い、了承を得られる範囲で事例検討を行っていく。なお、現段階で在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンターからは協力について承諾を得ており、ボランティアとして支援現場での参与観察を始めている。この研究を通して、マイクロアグレッション実態調査を発展させるだけでなく、マイノリティ(ここでは在日コリアン)の悩みにどのようにマイクロアグレッションが関わり、それに対しいかなる対応が可能になるのかを、心理ー社会学的観点から具体的に考察する。これにより、心理学と社会学を結び、心理化されない臨床実践と現場に還元しうる差別研究を切り拓くことを目指す。
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Research Products
(5 results)