2023 Fiscal Year Annual Research Report
12-14世紀日本における「正しい」出訴手続と帰属/縁故
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22KJ3008
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
黒瀬 にな 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 日本中世法 / 本所裁判 / 訴訟手続 / 規範認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)最終年度(2023)は、前年度より引き続き、鎌倉時代中期(文永年間)における近江国伊香立荘対葛川の本所裁判事案を分析した。まず、前年度におこなった中間的研究報告の成果を踏まえ、必要な史料・文献の追加収集・調査を実施し、テクストの校訂および内容検討を進めた。それら資史料を基に、文書機能論の観点を深めるという角度から訴訟文書の事後的性格づけに着眼した研究報告を組み立て、口頭発表した。これは2024年度中に論説として公表する予定である。 また、室町時代の強盗事件を扱った論考に対する論評を執筆した。紛争対処にあたり当事者が上位者との関係をいかなる条件下でいかに活用していたかという本研究課題の問題関心にとって、時期的視程を伸ばした考察としての意義を有する。同様の狙いから、平安時代における訴訟管轄の流動化(提訴先選択問題の発生・顕在化)といわゆる私的結合問題との連関についても、文献調査を実施した。 なお、研究成果の普及活動として、2021(令和3)年度の研究成果発表として計上した、『御成敗式目ハンドブック』(日本史史料研究会監修、神野潔・佐藤雄基編、吉川弘文館、2024年3月10日刊)における研究代表者担当章の内容につき、受入研究機関の学部対象講義におけるゲスト講師という形で講演する機会を得た。
(2)研究期間全体を通じて、公式・非公式の人的紐帯の側面からの分析は主たる成果に結実しなかったものの、手続規範認識に根ざした口実調達の問題に関する研究枠組みを見直し、深化させることができた。社会関係の錯綜と訴訟管轄の問題は武家裁判の側面から整理をおこなった。これらと上述(1)の本所裁判分析により、中世訴訟における手続的規範性の探究という本課題の目的を一定程度達成したと考える。
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Remarks |
旧課題番号:21J00100
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