2022 Fiscal Year Annual Research Report
フッ化硫化物系アニオン制御の基礎学理構築と固体電解質材料群の開拓
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21J22054
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
橘 慎太朗 立命館大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | フッ化硫化物 / 複合アニオン化合物 / フッ化物イオン伝導体 / フッ化物イオン電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、フッ化硫化物La2+xSr1-xF4+xS2のイオン伝導支配因子を解明するとともに、未知フッ化硫化物相の探索を行い、新奇な結晶構造を持つフッ化物イオン伝導体を見出した。フッ化硫化物を用いたフッ化物イオン伝導体の材料設計が、フッ化物イオン伝導を示す結晶構造のバリエーション拡大に貢献できることを明らかにした。 フッ化硫化物La2+xSr1-xF4+xS2は、フッ化物イオンと硫化物イオンが分け隔たれた2次元層状構造であり、フッ化物イオン層において正規サイトと格子間サイトが存在することを明らかにしていた。中性子構造解析によるフッ化物イオンサイトの精密化や核密度分布解析により、格子間サイトの占有率向上がフッ化物イオン伝導率の向上に効果的であることを明らかにした。 また、La2+xSr1-xF4+xS2と同様の合成手法を用いることで、未知結晶相La-Ba-F-Sを新たに合成し、フッ化物イオン伝導を示すことを明らかにした。粉末X線回折パターンを用いた未知結晶構造解析を行い、結晶構造解明に成功した。具体的には、実空間法とリートベルト解析を組み合わせた結晶構造パラメータの精密化と結合原子価法(BVS法 : Bond Valence Sum)による化学的妥当性の評価を行った。未知結晶相La-Ba-F-Sは、既報のフッ化硫化物と同様に、2種類のアニオンが分け隔たれた2次元層状構造を有していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フッ化物イオン伝導体La2+xSr1-xF4+xS2の導電性向上に向けた設計指針を提示することに成功している。中性子構造解析によるフッ化物イオンサイトの精密化から、格子間フッ化物イオンサイトの占有率の違いが核密度分布に明確な差異を与えており、La2+xSr1-xF4+xS2におけるキャリア濃度の違いを可視化している。更なるフッ化物イオン伝導率向上に向けて、原料仕込み時に過剰なフッ化物イオンを導入することにより、格子間フッ化物イオンサイトの占有率を向上する材料設計を検討している。 また、未知結晶相La-Ba-F-Sの結晶構造解明とフッ化物イオン伝導性について明らかにしている。フッ化硫化物La-Ba-F-Sの結晶構造は、La2SrF4S2化合物と同様に、アニオンが分け隔たれた構造を有しており、フッ化物イオン伝導層を含んでいる。交流インピーダンス法によるフッ化物イオン伝導率測定により、La-Ba-F-S化合物はLa2SrF4S2と比較して低い活性化エネルギーを有していることを明らかにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
La2+xSr1-xF4+xS2化合物への更なる導電率向上のための元素置換制御とともに、得られたフッ化硫化物La-Ba-F-S相におけるフッ化物イオン伝導メカニズムを明らかにする。また、フッ化物イオン伝導を示すフッ化物(PbSnF4やLa1-xBaxF3-x)とフッ化硫化物(La2+xSr1-xF4+xS2やLa-Ba-F-S)との比較により、フッ化硫化物におけるフッ化物イオン伝導機構の特異性や硫化物イオンの存在がフッ化物イオン伝導性に与える効果について検討する。 合成したフッ化硫化物La-Ba-F-S相は、X線結晶構造解析により、フッ化物イオン層が含まれた2次元層状構造を有していることを明らかにしている。このフッ化物イオン層における導電機構を解明するために、中性子回折測定を用いたフッ化物イオンサイトの精密化と核密度分布解析を行う。 また、既報のフッ化物と新たにフッ化物イオン伝導性を明らかにしたフッ化硫化物との比較により、フッ化硫化物群のフッ化物イオン伝導体としての潜在性を明らかにする。具体的には、精密化したフッ化硫化物と既報のフッ化物イオン伝導体との結晶構造・局所構造比較やX線吸収分光測定による電子構造解析を行う。フッ化物イオンサイトの構造パラメータ(占有率、温度因子)やフッ化物イオンサイト間距離、イオン伝導を支配する活性化エネルギーや前指数因子について比較を行い、フッ化物イオン伝導率向上に向けた指針を確立する。
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