2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J40223
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Teikyo University |
Research Fellow |
吉松 覚 帝京大学, 外国語学部, 講師
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はジャック・デリダの講義録『生死』およびジャック・デリダの『メモワール』の翻訳を刊行し、査読論文として「可傷的なものと可塑性」(『メルロ =ポンティ研究』)を公表した。また、当該年度の補助金を繰り越した2023年度の主な研究実績を報告する。口頭発表として、脱構築研究会での口頭発表を四度 行なった。(一)4月に開催されたデリダの『生死』講義の邦訳出版記念のシンポジウム(於・金沢大学)では、翻訳を担当した第4回から第6回の紹介を行なった。 (二)7月に開催されたまたデリダ『メモワール』の邦訳出版記念のワークショップ(於・東京都立大学)では、同じく翻訳と担当した第1部の前半について、デリダにおける喪の問題を、精神分析での喪の作業に対するデリダの理解という観点から論じた。(三)9月に開催された、東浩紀氏の『存在論的、郵便的』出版25周年を記念したコロキウム(於・専修大学)では、東氏のデリダ読解における、リズムというテーマ系を改めてリズムの哲学に定位し直すことを試みた。(四)2月に開催された脱構築研究会発足10年のカンファレンス(於・早稲田大学)では、今後の研究の展望として、ミシェル・アンリやアンドレ・グリーンなど同時代の理論家との比較研究の可能性を提示した。また、1のシンポジウムの原稿は、同研究会のジャーナル『Supplements』に掲載されている。加えて、ピーター・サモンによるデリダの評伝『ジャック・デリダ その哲学と人生、出来事ひょっとすると』を共訳し、刊行した。 2021年度からの3年間としては、共訳および分担訳書として6冊(『自閉症者たちは何を考えているのか?』『いま、言葉で息をするために』『生死』『メモワー ル』『ジャン=リュック・ナンシーの哲学』『ジャック・デリダ その哲学と人生、出来事、ひょっとすると』)、口頭発表を5回、論文を2本(うち1本は査読 つき)発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由は以下の2点の通りである。第一に、査読論文「可傷的なものと可塑性」を刊行し、マラブーやメルロ=ポンティなどについての知見を深め、かつ研究成果を上げることができた点、第二にかつ主たる読解対象のデリダの未邦訳の著作と講義録の翻訳書を刊行することができた点。いずれも本研究費の助成によって可能になったものであり、かつその成果を広く社会に公開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該補助金は2022年度に50万円交付されているうち、5万円を最終年度の2023年度に繰り越した。そして研究最終年度の2023年度終了後に本報告書を作成しているため、3年間の成果を踏まえた研究推進方策を述べる。本補助金および基金課題は「20世紀フランス哲学における生の問題」と題した研究費ではあるが、精神分析と脱構築主義の思想、そして現象学を中心的に取り上げるにとどまった。例えばJ.-P. シャンジューらの哲学と交流した神経学者の著作や、あるいは現象学のなかでもとりわけ独自の生の哲学を説いたミシェル・アンリについては研究成果を公開することができなかった。これらの思想についてもさらに検討することで、本課題の目標はより十全なものとなるだろう。
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