2022 Fiscal Year Annual Research Report
Periodizing American Literature of the 1990s.
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22J01426
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
青木 耕平 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 現代文学 / 1990年代 / ポスト冷戦 / 多文化主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度、特別研究員PDに採択された初年度におこなったことは、柱となる研究三つへの本格的な着手であった。「研究目的1」の「1990年代の美的フォーム "ニュー・シンセリティー" とデヴィッド・フォスター・ウォレス研究」について、まず、学振PD受入研究教員でありウォレス作品について詳しい吉田恭子氏と『Infinite Jest』研究会を立命館大学を拠点として立ち上げ、定期的に読み進めた。「研究目的2」の「1990年代のイデオロギー "多文化主義" と文学における新自由主義の関係性」について、研究対象の中心に置くのはアフリカン・アメリカンの作家イシュメール・リードで、彼は1992年に「アメリカ文学の海」という論争的エッセイのなかで多文化主義批判に対して公然と戦った。「多文化主義はアイデンティティー政治を用意し、アイデンティティー政治は新自由主義を進展させた」とは多文化主義批判に繰り返される常套句である。このクリシェを喝破するべくリードによる文化戦争を揶揄した企業小説『ジャパニーズ・バイ・スプリング』を精読し、2022年6月に本研究費を使用しデラウェア大学「イシュメール・リード・ペイパーズ」に赴き草稿研究を行った。また、その成果は2022年7月に開催された立命館大学英米文学会第31回大会にて「多文化主義と資本主義:イシュメール・リード『春までに日本語』から考える」にて報告した。「研究目的」3の「産業体制としての "創作文芸科" の1990年代における制度化の今日的影響」については、後進の作家たちの創作術に多くの影響を与えたアーシュラ・K・ル=グウィンのアーカイブ調査を、オレゴン大学保有のル=グウィン・ペーパーズに滞在し行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請した予定通りにデラウェア大学のリード・ペイパーズとオレゴン大学のルグウィン・ペーパーズに滞在し現地調査を行うことが出来た。また、計画通りに「デヴィッド・フォスター・ウォレス『インフィニット・ジェスト』研究会」を立ち上げ、定期的に実施することが出来ている。以上のことから、三年計画の一年目としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度:特別研究員採択一年目にイシュメール・リード・ペーパーズに資料調査で訪れ、そこで得た資料をもとに立命館英米学会にて口頭発表を行ったことは上記「研究業績の概要」に述べたとおりである。これを、新たな着任先である愛知県立大学の紀要もしくは学会発表を行った立命館英文学会紀要に2024年度ないし2025年度内に投稿する。また、創作文芸科出身/在 籍者がほぼ全構成員を占める非常に大きな組織「AWP(Association of Writers and Writers Programs、作家・劇作家協会)」の2024年2月のカンザス大会へ参加し、視察を行う。 令和6年度:最終年度までに国内で『インフィニット・ジェスト』研究を深めたのち、2025年度にはテキサス大学ハリーランサムセンターが保有する「デヴィッド・フォスター ・ウォレス・コレクション」を訪問しアーカイブ調査を行う。精査対象は『Infinite Jest』 草稿で、「Sincerity」用法の変遷をまとめる。またその成果を同作家協会の年次大会にて口頭発表し、そこで得たコメントを活かし、論文として投稿する。 最終的には全ての成果をもって「1990年代アメリカ文学論」として単著出版を目指す。
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