2022 Fiscal Year Annual Research Report
戦後精神保健医療福祉における救護施設の役割と実践:アーカイブズ整備の検討とともに
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22J15452
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
篠原 史生 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 救護施設 / 生活保護法 / 精神衛生法 / 精神障害者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後日本の救護施設における精神障害者処遇の役割と実践を考察するものである。今年度は、主に以下のように研究をすすめた。 ①生活保護法と精神障害者処遇の関係をめぐって、精神病院退院後の生活保護精神障害者を専門的に受け入れた緊急救護施設の創設(1958年)に着目し、とくに1950年代の厚生省社会局の議論と動向を分析・検討した。その結果、社会局は1950年代初めから医療扶助入院精神病者に注目していたこと、「慢性固定」の医療扶助入院者は退院させて保護施設に収容すべきと一貫して主張していたこと、「分離案」、「救護所構想」、「入退院基準」という一連の動きを経て緊急救護施設創設に至ったことについて考察した。この内容については、第25回日本精神医学史学会にて発表した。また、この内容をまとめた論文を学術誌に投稿した。 ②1970年代以降の救護施設における精神障害者処遇をめぐって、1970年代に至るまでの厚生省の施策の変遷、救護施設関係者の議論と動向に着目して、資料調査とその分析を行った。厚生省は救護施設における精神障害者処遇に対して十分な予算措置を講じていなかったと推察されること、そうした状況に対して施設関係者からは不満の声があがっていたこと、施設関係者を中心に精神障害者処遇の実践の質向上ならびに施策の改善を目指した動きがみられたことについて検討した。 ③1960年代以降の救護施設における精神障害者処遇の実態について、施設関係者の方のご協力のもと、個別の救護施設における資料調査や聞き取りを行った。調査は現在も継続しており、次年度も引き続き現地に赴いて調査を実施し、その結果をもとに救護施設に入所した精神障害者の処遇実態について分析・検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関係者の方の協力のもと、研究対象として想定していた救護施設や関係機関への訪問調査を複数回実施できたことで資料収集に関しては一定の進展をみた。しかし、資料調査は完了しておらず、当初想定していた以上に時間を要することが明らかになった。また、当初予定していた1950年代の医療扶助入院精神障害者の処遇問題について、成果をまとめて学会発表後に論文投稿をしたものの、現時点では未だ公表には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集した資料をもとに主に精神障害者処遇をめぐる救護施設関係者による議論を整理し、1960年代以降に厚生省は救護施設の精神障害者処遇を精神医療・福祉政策のなかでどのように位置づけていたか、それに対して関係者はどのような議論と動向を展開していたかを検討する。さらに、1960年代以降の救護施設における精神障害者処遇について、引き続き現在調査中の施設における資料の整理・分析をすすめる。年度後期にはそれらの成果をとりまとめる。
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