2022 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄のシングルマザーの子産み・子育てをめぐる実証的研究―自立と主体性の再考
Project/Area Number |
22J15601
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
平安名 萌恵 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 母子世帯 / 沖縄 / 家族主義 / ケア / 生活史 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究実績は以下(1)~(4)の4つ挙げることができる。 (1)沖縄で子育てをした経験があるシングルマザー10名への生活史聞き取り調査を実施した。調査では60代以上の女性への聞き取りを中心に行った。沖縄戦後・米軍統治下の子育ての実態、世代ごとの変化が明らかになりつつある。 (2)沖縄のシングルマザーにとって「家族とは何か」という、本研究の最も大きなリサーチクエスチョンに対する一つの回答を、これまでの調査結果からまとめ、査読付き研究ノート、平安名萌恵,2022,「『雨宿り』としての家族――貧困下における家族実践から」『ソシオロジ』67巻1号に掲載された。本稿は、沖縄研究のみならず従来の貧困研究の「家族」観を問う内容となっている。 (3)2021年度まで実施した母子生活支援施設における参与観察調査結果が、査読付き論文、平安名萌恵,2023,「母子生活支援施設職員の母親規範正当化プロセス――入居者の交際に着目して」『コア・エシックス』19に掲載された。本研究は、沖縄の支援現場の実態を明らかにした内容であり、沖縄のシングルマザーがなぜ公的支援につながらないのかを考えるための基礎研究となっている。 (4)戦後沖縄の母子福祉制度の歴史的変遷についての分析結果をもとに、琉球沖縄歴史学会:2022年12月例会 『沖縄県史 各論編7 現代』の記述に対する書評をおこなった。「沖縄の語り方」に対して変化が必要であるという、新たな研究視座を提示できたと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に以下A-Cの3つの課題に応答するために、フィールドワーク調査や資料調査を実施した。 A:「沖縄のシングルマザーは、どのように親族と関係性を築きながら、子産み・子育てをしているのか」。この問いに答えるために、生活史インタビュー調査・参与観察調査といったフィールドワークを中心にして研究を実施した。20代から80代までのひとり親として子育てを経験した女性たち約10人への聞き取り調査と、約半年にわたる参与観察調査を実施した。調査・分析の結果から、全世代を通して、沖縄の女性たちは公的支援につながることができず、また親族にも頼ることなく、むしろ彼らに対する介護と育児を一身に背負いながら生活していることが明らかになりつつある。 B:「戦後以降、沖縄の母子福祉はどのように形成・実施されてきたのか」。この問いに答えるために、戦後沖縄の母子福祉制度に関する議事録等の歴史資料を収集・分析した。政策の変遷をまとめるだけでなく、それらの制度に沖縄の母子支援に母親規範や家族規範言説がみられるのかも含めて分析をしている。 C:「本研究のもつ家族社会学的な意義は何か」。この問いに答えるために、沖縄研究のみならず、戦後日本における家族病理学研究・家族社会学の文献の収集・検討を行い、本研究が家族変動論や家族福祉研究に対する有用性を考察している。 以上のような調査実施に加えて、成果発表も行った。学術雑誌には、生活史インタビュー調査をまとめた研究ノートと母子生活支援施設での参与観察調査結果をまとめた研究論文がそれぞれ掲載されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度も、昨年度と同様に主に以下A-Cの3つの課題に応答するために、フィールドワーク調査や資料調査を継続して実施する予定である。それぞれの問いの応じた本年度の課題を述べる。A:「沖縄のシングルマザーは、どのように親族と関係性を築きながら、子産み・子育てをしているのか」。60才以上の女性のサンプル数が不足しており、調査を継続する必要がある。約10人へのインタビューを行い、具体的な世代間比較分析についても実施したい。B:「戦後以降、沖縄の母子福祉はどのように形成・実施されてきたのか」。日本本土との政策の比較に加えて、2021年まで実施していた母子生活支援施設における参与観察調査結果との関連性も検討したい。C:「本研究のもつ家族社会学的な意義は何か」。本研究の分析手法であるライフヒストリー研究法の家族社会学研究に対する意義についても考察を進めたい。
|
Research Products
(2 results)