2022 Fiscal Year Annual Research Report
短寿命励起状態を高活用できる有機無機ナノ複合体の創成
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22J23062
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉岡 大祐 立命館大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 半導体ナノ結晶 / ペリレンビスイミド / 電荷分離 / 過渡吸収 / 配位子脱離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は「有機分子の高励起状態から強い還元特性を維持しながら電子を効率よく取り出し、その励起状態を長寿命化できる新材料の創出」である。本年度の研究では光機能性有機分子であるペリレンビスイミドの段階的二光子吸収過程によって生成した高励起状態の電子を、半導体の中で最も低い伝導帯準位を有する硫化亜鉛ナノ結晶に注入することに成功し、その励起状態ダイナミクスを解析した。また、それに付随して、光励起に伴うペリレンビスイミドの疑可逆的脱離過程を世界に先駆けて見出した。 本研究で用いた無機半導体ナノ結晶は表面での反応性が高く一般的に有機分子の配位子で被覆されている。近年この配位子を機能性有機分子に置き換えた有機無機ハイブリッド材料が新たに注目を集めている。これらの材料は、光触媒、フォトンアップコンバージョン材料や太陽電池など様々な光機能性材料に応用されている。一般的に用いられる単純なアルキル構造を持つ配位子は、基底状態や光励起状態でダイナミックに結合部位が変化することが明らかになってきた。一方、機能性有機分子と半導体ナノ結晶間の結合状態は光励起前後で安定であるとみなされてきたが、その保証はない。光励起前後での配位子とナノ結晶間の結合状態の詳しい理解は、これらの材料を応用する上で重要であるといえる。そこで、高励起状態のダイナミクスに加え、ペリレンビスイミドと硫化亜鉛のナノ結晶における光励起状態での結合変化を明らかにした。この反応はフェムト秒から数秒にかけての幅広い分光測定と量子化学計算を組み合わせて解析を行っている。この研究結果を拡張することで、新規光リソグラフィー材料や光触媒などを開発することが可能であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に計画していた、機能性有機分子と無機半導体ナノ結晶間での段階的二光子吸収過程を、より伝導体の還元力の高い硫化亜鉛において達成した。また、硫化亜鉛半導体ナノ結晶に配位した機能性有機分子が光照射によって可逆的に脱離する反応を世界に先駆けて見出し、これらの分子系に関連した研究を重点的に行った。このような材料は、反応性の高い半導体ナノ結晶の表面を可視や近赤外の光によってオンデマンドに発現させるような新規光触媒や、光リソグラフィーなどの新しい技術に応用が可能であると考える。以上の点からおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度達成した有機分子と無機ナノ結晶間での段階的二光子吸収過程をより発展させるべく、より伝導体の電位の低い絶縁体などを用いることを目指す。さらに、異方性を持つナノ結晶などを用いることにより、有機分子から段階的二光子吸収過程によって抽出した高励起状態の電子の寿命を延ばした上で、触媒として活用することを目指す。また、光照射によって可逆的に機能性有機分子がナノ結晶表面から脱離する現象は、ナノ結晶の構造や結合部位に用いている配位子を適切に変えることで大幅な効率化を見込めることが期待されている。機能性有機分子は光照射時にラジカル体として脱離することがわかっている。そのため、光触媒やリソグラフィー材料以外にも新規のフォトクロミック材料として駆動することが期待されるため、今年度以降も引き続きこの分子系の探索を行う。
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Research Products
(7 results)