2023 Fiscal Year Research-status Report
原発避難者の被災経験の記憶と想起──ものづくり実践を中心に
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22KJ3039
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
坂本 唯 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 福島原発事故 / 放射能汚染問題 / 生活再建 / 創作活動 / 世代間倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)「日本災害復興学会論文集への掲載」2022年度より調査を継続してきた原発事故避難者によるものづくり・創作活動の事例を査読付き論文に投稿した。福島原発事故をめぐる社会関係の分断に対し、個人がおこなう創作活動がどのようなインパクトをもたらしうるのかについて考察した。 2)「国際シンポジウム報告」International Symposium on Environmental Sociology in East Asiaでの自由報告を行った。2023年度に調査を実施した市民活動としての放射能測定の意義について、英語での報告をおこなった。また、東アジアにおいて環境問題や公害問題を中心に扱う研究者たちが多く集まり、当該研究を発展させる視座を得ることができた。 3)「調査対象者の拡大」前年度以降の調査結果をふまえて、調査対象者を拡大することができた。具体的には、原発事故避難指示区域外に居住する者を対象に、放射性物質の影響を受けながらも、どのように生活を継続してきたのかについて複数の調査をおこなうことができた。一つは、放射性物質の測定を自主的に行う市民活動グループへの参与観察をおこなった(2023年2月から現在に至る)。もう一つは、原発事故による放射能汚染をきっかけに、無農薬農業へと転換したグループのメンバーへの調査である(2023年10月から現在に至る)。身近な生活環境における放射能汚染にたいして、様々な対処方法を暮らしのなかで実践してきた事実を調査によって得ることができた。また、原発事故当時、主に10代だった子ども世代へのヒアリングを4名に実施した。さらに、事故後に旧強制避難区域に転入した20代が集まる場での参与観察を、複数回にわたって実施した。これらの対象者への調査は、若者世代が原発事故をどのように認識しているのかを知るきっかけとなり、当該研究の今後の視点を深めるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度よりも調査対象者を拡大することによって、当該研究のテーマである「原発事故の生活再建とものづくり」を、より多角的に分析可能なデータを得ることができた。具体的には、「ものづくり」の範囲を、「暮らしをつくる」という意味に拡大して捉えることによって、原発事故による放射能汚染下での暮らしのつくり方について、調査を行うことができた。また、当該研究の内容を博士論文の一部として執筆するため、その構成に必要な査読論文を、現在までに2本掲載することができた。 一方で、2023年度に計画していた海外での調査計画については、調査協力者を十分に見つけることができなかったため、調査を延期することにした。その代わり、福島県内において活動する複数の市民活動グループにアクセスすることができた。今後の課題は、国内外における放射性被ばくと原発事故を問題にする草の根ネットワークに参与し、情報を継続的に得ることである。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は当該研究の最終年度になり、そこでの成果を博士論文の一部として執筆する予定である。そのため、2024年度は当該研究および博士論文に必要な一次データを収集しながら、執筆を進める。 さらに当該研究の成果報告を、アカデミック以外の場をふくめた実践活動としておこなうことを目指す。具体的には、原発事故による環境汚染をNIAMY(Not in Anybody’s Background)な問題として認識するきっかけを、ワークショップまたは映画上映会を通してつくることを検討している。ここでの狙いは、原発事故による環境汚染の問題を、NIMBY問題としてではなく、地域社会で暮らすうえで生活者にとって身近な問題に引き付けて考えることである。この活動は、当該研究のテーマである「原発事故後の生活再建」を活かすことで実施を可能にするものである。 加えて、当該研究が取り組んできた原発事故をめぐる議論は、科学的に不確実な部分が多く、事故を起こした側への情報信頼性の問題もある。そのため、原発事故をめぐる地域社会での暮らしをアカデミア以外の場で議論することは、市民としての情報リテラシーを身に着ける場としての機能、さらに研究者と市民が共に学ぶ場としての役割が期待できる。
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Causes of Carryover |
2023年度の計画では、当該研究にかかわる調査をフランスで実施することを予定していた。しかしながら、十分な数の調査協力者を現地で見つけることができなかったため、次年度使用額が生じた。2024年度では、今後の国外調査をふまえて、英語文献を広く集めることから物品費の予算を執行する。また、必要なインタビューデータの文字起こしを発注し、研究をより効率的に進めていく。さらに研究計画に応じて、2024年度ではアカデミア以外の場面で、当該研究に関するワークショップを開催することを予定している。その際に必要となる広告費や、協力者への人件費なども執行する予定である。
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Research Products
(2 results)