2022 Fiscal Year Annual Research Report
環境DNA技術に基づく魚類の年級群および体サイズ推定手法の確立
Project/Area Number |
22J00439
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
徐 寿明 龍谷大学, 先端理工学, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 環境DNA / 環境RNA / ゼブラフィッシュ / アユ / 水産資源 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ゼブラフィッシュ (<i>Danio rerio<i>) とアユ (<i>Plecoglossus altivelis<i>) の核rRNA遺伝子領域を対象としたマーカーを新たに開発した。 2.ゼブラフィッシュを用いた水槽実験を行い、環境RNAの回収・保存・抽出方法の改良を行った。 3.環境DNA濃度と生物量の相関性を核およびミトコンドリア遺伝子マーカー間で比較するために、過去のデータセットの再解析に加え、ゼブラフィッシュを用いた水槽実験を行った。サンプルサイズの少なさ故に遺伝子マーカー間での相関性の違いは統計的有意でなかったもの、核DNAを対象にすることで相関性が向上する例がしばしば見られた。 4.環境DNA濃度と生物量の相関性に対する環境DNAの分析方法 (サイズ画分、PCR増幅長) の影響を調べるために、過去のデータセットの再解析に加え、ゼブラフィッシュを用いた水槽実験を行った。分析される環境DNAのサイズ画分によって相関性は著しく変動した一方、この相関性とPCR増幅長は負に相関した。 5.環境DNA濃度と生物量の相関性に対する水温の影響を調べるために、数値シミュレーションを行った。水温の上昇に伴い環境DNAの分解速度が高くなるにつれ、相関性は向上する傾向にあった。並行してメタ解析を行い、この相関性は採水時の水温と有意な正の相関を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・特にアユについて、同じrRNA遺伝子上でも保存性が高いとされる転写領域の18S遺伝子を対象に、マーカーを開発することができた。この新規マーカーの種特異性はin silicoおよびin vitroの両方で確認できており、来年度に実施する水槽実験に加え、以降の野外調査にも即時に適用できる。また、この核DNAマーカーはミトコンドリアDNAマーカーの10倍以上の検出感度を有していることが、予備実験から示唆されている。 ・交付申請書では記述されていなかったが、環境DNAに加え環境RNAの分析も行うことになったため、上記のマーカー開発と並行して環境RNAの回収・保存・抽出方法の改良を行った。特に、RNAlater試薬にろ過フィルターを浸すことで環境RNAは冷蔵条件でも1週間程度安定的に検出できること、そしてRNA抽出に用いるバッファー量を調整することで抽出効率が劇的に向上することが判明し、水サンプルからの魚類環境RNAの安定的な検出が期待できる。 ・さらに、環境DNAに基づく生物量推定パフォーマンスの多角的な理解に向けて、環境DNA濃度と生物量の相関性に対する環境DNA粒子の存在状態や環境条件の影響を調べた。その過程で、水槽実験だけでなくメタ解析や数値シミュレーションなど異なる実験アプローチのための方法論を身につけることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度から、人工種苗のアユを用いた水槽実験を行う。ヒウオ期から飼育し続け、それらの成長と並行して環境DNA・RNA分析を経時的に行い、(1) 環境DNA・RNA放出量の体サイズ依存性、(2) 環境DNA比 (ミトコンドリア: 核) ・核酸比 (RNA: DNA) の体サイズ依存性をそれぞれ明らかにする。これらの結果から、集団内の体サイズ構成の違いが生物量推定パフォーマンスに及ぼすバイアスを評価すると共に、環境DNA技術を用いた魚類の体サイズ推定の可能性を検証する。
|