2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J00224
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
三品 拓人 関西大学, 社会学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 児童養護施設 / 社会的養護 / 家庭観 / 子ども観 / 実践 / 教育問題 / 脱施設化 / 構造的変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
児童養護施設の質的調査から、構造的変容の内実を解明しようとする本研究課題に関連する主な研究実績としては、以下の5点が挙げられる。 1点目に、新型コロナ流行によって、児童養護施設の内部にはどのような影響があったのかという問題に取り組んだ。特にコロナ禍による「脆弱性の顕在化」という観点から、「コロナ禍における児童養護施設のエスノグラフィ」というタイトルで第43回早稲田社会学会研究例会において、研究報告を行った。2点目に、中規模施設において個別化の兆候が進んでいること、生活フロアの定員の縮小やルールの緩和、小規模施設の設置、施設環境が改善など施設環境の変容の内実の一端を明らかにした。同内容は「児童養護施設における日常生活の変容」というタイトルで、第73回関西社会学会大会において報告した。3点目に児童養護施設・乳児院・母子生活支援施設という異なった種別の施設において、どのような子ども観が見られるのかなどを職員の語りなどから示した。こちらは「社会的養護施設における相互行為のなかの子ども観――児童養護施設・乳児院・母子生活支援施設」というタイトルで、第29回日本子ども社会学会大会にて報告を行った。 以下は書籍として刊行された研究実績である。4点目に「児童養護施設の日常生活と子どもの経験――小学生男子の〈友人〉関係形成を例に」野辺陽子編著『家族変動と子どもの社会学』(新曜社)が公刊された。5点目に、児童養護施設の子どもたちと「教育」をめぐる問題について調べ、施設の概要とこれまでの観察によるエピソードなどをもとに、学習環境、退所後の不利さ、アフターケアなどもまで論じた。「児童養護施設と「教育」をめぐる問題」というタイトルで『現代思想』の中に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究実施計画として次の3点を挙げていた。1点目は、前年度までの観察等の研究成果を報告することであった。2点目は、新型コロナなどの影響もあり前年度遂行できなかった分も含め、様々な社会調査を実施することであった。3点目は、国際学会における報告の準備であった。この計画と照らし合わせると、やや研究の進捗が遅れているように自覚している。 1点目の前年度の研究成果の報告は、学会・研究会等において概ね遂行できた。2点目の各種調査においては、児童心理治療施設に関する歴史的な資料収集も精力的におこなった。また、施設退所者とも多く交流し、ラポールの形成に務めた。また、施設職員への予備的なインタビューも数件実施できた。しかし、入所中の「問題」が退所後の人生とどのように関わってくるのか等の分析・解釈を行うことや、施設内の医療化や専門化の兆候などに関する社会調査は十分に実施できなかった。この点で、当初の研究計画に遅れ・ズレが生じている。3点目は、研究の進捗が遅れた影響や同時期に優先して取り組むべき研究内容があったため、当初計画していた国際学会へのエントリーを断念せざるを得なかった。ただし、当初の研究実施計画とは異なった研究業績を出すこともできているので、研究自体の進展もみられている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は3年目であり最終年度となるため、時間配分や優先順位等に気をつけながら本研究課題の遂行に邁進していきたい。 そのために現段階の研究進行状況をより整理する必要がある。とりわけ、何をどのような形で、研究成果として提出していくのかという点を精査したい。そのために、これまでの自身の研究成果を体系的にまとめる。次にそれらを踏まえて、研究テーマ(とりわけ査読つき論文を目指す際に)について焦点の絞り方を検討する必要がある。その上で、本研究課題の遂行のために、より焦点化した課題を明確にする。また、継続的な調査と文献検討が不足しているため、今後必ず実施する。可能な限り今年度前半のうちに調査も終え、後期は分析と執筆、研究課題のまとめなどに、当てられるよう早めに準備をすることを心がける。 国際学会等での発表を見込み、国際的な意義・視座をともなった研究を行えるようにする。受け入れ研究者を中心とする研究会において、児童養護施設等に関する海外の研究を収集、精読しているため、自分自身でも海外文献を読みつつ海外の査読雑誌への投稿なども意識して研究をすすめたい。
|