2022 Fiscal Year Annual Research Report
元代中国書法の東アジアにおける伝播と受容――日本・韓国を中心に
Project/Area Number |
22J10396
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
KANG JIAQI 関西大学, 東アジア文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 元代書法 / 日本書道 / 禅宗墨跡 / 韓国書芸 / 鎌倉時代 / 室町時代 / 高麗王朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は順調に進展し、これまで本人の成果に基づいて、元代中国の書法作品の東アジアにおける伝播を考察し、さらに中国の元代、日本の鎌倉・室町時代、韓国の高麗時代それぞれの書跡(碑刻及び墨跡)を収集、整理し、研究基礎を築きました。 鎌倉、室町時代の日本と中国は、中国から日本への貿易船が頻繁に海上貿易を行い、唐船を通じて、日本は元代の書法に関する作品や書籍などを多く受け入れた。そのため、日本に所蔵されている元代中国の書法作品を収集、整理する必要がある。日本の東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、天理図書館、天龍寺、円覚寺などの収蔵機関を実地調査し、関連書道作品を撮影した。また、各種サイトや関連雑誌(「書道漢学研究」、「禅文化」、「茶道研究」、「美術研究」に掲載された書道作品)を結合し、書道作品の収集を行っていった。元代は、中国の書法史において非常に重要な時代であり、書法の発展体系が整備され、各書体の発展が盛んで、一方では海上から日本に、他方では陸上から高麗に伝播した。当時の高麗王朝は、元朝と緊密に交流し、朝貢と冊封の関係を維持し、使者を中国に派遣して交流したため、高麗書芸の発展は中国元代書法の影響を受けた。 そして、書法作品を収集、整理した後、関連書法作品を相互に比較し、それぞれ(A)元代中国と日本の鎌倉、室町時代、(B)元代中国と韓国の高麗時代の2種類のカテゴリがある。すなわち、一山一寧と雪村友梅、無学祖元と夢窓疎石、古林清茂と石室善玖といった師承関係にある人々の筆法、間架結構法、布置章法における学習や継承の痕跡を解析、比較しつつ検討し、元代中国書法の日本及び韓国への伝播状況の様相を具体的に考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響で、韓国国立中央博物館、湖林美術館、景福宮、普願寺などの収蔵機関への現地調査については、2023年度に延期された。
|
Strategy for Future Research Activity |
書法作品収集を行うとともに、書家たちが残した書法理論を収集、整理し、書法伝播の理論面につき考察したい。そのために、①収集、整理した書法作品の釈文から書法論の記述を検出する。②雪村友梅『岷峨集』、寂室元光『永源寂室和尚語録』、袁桷『清容居士集』、程鉅夫『雪楼集』、李斉賢『櫟翁稗説』、徐居正『筆苑雑記』等、代表的書家の題跋や文集、詩集等を調査し、生涯、師承、交遊等を明らかにするとともに、そこに見出される書法関連記述を整理し、彼らの書学の由来や特色につき考察する。③その基礎の上に立って、時代や国ごとの特色や個性を総括し、中国の元代、日本の鎌倉・室町時代、韓国の高麗時代における書法理論を比較検討し、書法伝播の様相を解明したい。 また、朝鮮資料収集のため韓国だけではなく、中国側の資料も重要であるため、韓国と中国へ出張し、博物館、図書館や美術館などにおいて資料を調査する。また東京の博物館と図書館にも書道に関連する資料が多いため調査を行い、以上の関係作品をカメラで撮影し画像データとして保存する。 以上のように、本課題は書法作品、書法理論、そして書法教育の三つの方面を取り上げることで、中国における元代の書法が日本の鎌倉・室町時代、韓国の高麗時代にどのように伝播し受容されたのかを比較研究の視点から考察するものである。
|