2023 Fiscal Year Annual Research Report
元代中国書法の東アジアにおける伝播と受容――日本・韓国を中心に
Project/Area Number |
22KJ3050
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
KANG JIAQI 関西大学, 東アジア文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 元代書法 / 東アジア / 受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.書法理論について 作品収集を行うとともに、書家たちが残した書法理論を収集、整理し、書法伝播の理論面につき考察した。そのために、①収集、整理した書法作品の釈文から書法論の記述を検出した。②雪村友梅『岷峨集』、寂室元光『永源寂室和尚語録』、袁桷『清容居士集』等、代表的書家の題跋や文集、詩集等を調査し、生涯、師承、交遊等を明らかにするとともに、そこに見出される書法関連記述を整理し、彼らの書学の由来や特色につき考察した。③その基礎の上に立って、時代や国ごとの特色や個性を総括し、中国の元代、日本の鎌倉・室町時代、韓国の高麗時代における書法理論を比較検討し、書法伝播の様相を解明する。 2.書法教育について これら書法作品及び書法理論研究の上に、さらにこの時期の書法教育についても論じした。書法の伝播と発展には教育制度による普及という面もあるからであった。①韓国の高麗時代には中国に倣って科挙が実施され、『高麗史』(1407年)に「書則観其筆画端楷」という選抜制度が書法教育モデルを明瞭に掲げ、また李斉賢『益斎乱稿』、柳馨遠「教選考説」などが高麗時代の書写規範につき詳細に論じていた。②日本の鎌倉、室町前期の書法教育制度は中国・韓国のような科挙教育とは異なり、多くは公家・寺院内での伝授方式が採用されていた。これら中日韓三国の書法教育モデルが元代書法の伝播、受容にどのような影響をもたらしたのかを考察することは、東アジアにおける書法研究の一環として重要な意味を持つといえた。 以上のように、本課題は書法作品、書法理論、そして書法教育の三つの方面を取り上げることで、中国における元代の書法が日本の鎌倉・室町時代、韓国の高麗時代にどのように伝播し受容されたのかを比較研究の視点から考察するものであった。
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