2022 Fiscal Year Annual Research Report
停滞する日本の政治参加に対する政治忌避態度による分析
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22J21283
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岡田 葦生 関西学院大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 政治心理学 / 政治忌避意識 / 政治参加 / 計量テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本においては政治参加をはじめ、市民参加・社会運動等、様々な社会行動の停滞が指摘されており、その一因として日本人特有の「政治を嫌う意識(以下、政治忌避意識)」の存在が指摘されてきた。しかし、この政治忌避意識がどのような性質を持つ心理であるかについては十分な知見が蓄積されておらず、政治忌避意識を用いた研究の多くは「日本人特殊論」を十分に脱しているとは言えない。 2022年度は、政治忌避意識の認知成分、すなわち、政治忌避意識は具体的に政治のいかなる側面に対して向けられているものなのかを検証した。具体的には、一般の有権者が政治のどのような部分を嫌っているかに関する自由解答データを収集し、これに対して計量テキスト分析を適用した。その結果、「高齢者中心」「空虚な論争と排他性」「私的利益の追求」「難解さと上辺の弱者支援」「閉鎖的な意思決定と柔軟性の欠如」という5つの認知成分が観察された。 成果の最大の意義は、これまで漠然と「日本人は政治が嫌い」と語られてきた領域について、「具体的にどのような点が嫌いなのか」という知見を付け加えたことである。今後、国際比較などによって、政治忌避意識が真に「日本人固有の特質」と言えるかどうかが検証されなければならないが、日本人の政治忌避意識の認知成分が十分に解明されていなかったこれまでの状況では、そもそも有意義な比較が困難であった。2022年度に得られた成果は、他国との比較を可能にする第一歩として位置付けることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は取得されたテキストデータに基づき、構造的トピックモデルを用い、政治忌避意識の認知成分の性質を分析した。分析結果は2022年度の日本選挙学会で報告し、査読付き学術雑誌に投稿した(現在査読対応中)。尺度作成のための第一段階は概ね完了している。 また、今後は二次データを用いた政治忌避意識の性質に関する時系列分析を予定しているが、そのデータ取得もすでに完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は政治忌避意識が時系列的にどのように変化してきたのかについての時系列分析、および、政治忌避意識を測定するための尺度作成を行う。 前者については、日米について分析を行い、2023年度の日本政治学会にて報告を行う予定である。後者については、2022年度に得られた知見と他の先行研究に基づいて尺度作成を行い、信頼性・妥当性の検証を行ったのち、社会心理学研究に投稿する。 また、2024年度は2023年度に作成した政治忌避意識尺度を用いて、他国における同意識の様相を探る予定である。
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