2022 Fiscal Year Annual Research Report
着脱可能なスルホニル基が誘導するオレフィンの位置/立体選択的多官能基化反応の開発
Project/Area Number |
22J14995
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
渡部 光 岡山理科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | ヘリセン / Mallory環化 / スルホン / パイ拡張 / 多官能基化 / スルホニル基 / 炭素-炭素結合形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究においてベンジルスルホンと芳香族ジアルデヒドから得られるビス(スルホニルエテニル)アレーンを用いたMallory環化を開発し、スルホニル基置換ヘリセンを合成した。なお、スルホニル基を持たない1,4-ジスチリルベンゼンのMallory環化では溶解性が乏しく効率良く反応が進行しなかったため、Mallory環化においてスルホニルエテニル骨格を有する化合物がより効率的に環化することを見出した。基質適用範囲の拡大を目的として、テレフタルアルデヒドと2種類のベンジルスルホンを段階的に反応させて非対称1,4-ビス(スルホニルエテニル)ベンゼンを調製し、Mallory環化を行ったところ[5]ヘリセンに加え、非対称[6]ヘリセン及び[7]ヘリセンを得ることに成功した。なお、非対称[6]ヘリセンについては単結晶X線構造解析に成功し、詳細な分子構造および結晶特性を明らかにした。これらにより得たスルホニル基置換ヘリセンの更なる変換反応について検討したところヨウ化サマリウムを用いた一電子還元反応から脱スルホニル化体が得られた。またニッケル触媒とグリニャール試薬を用いたクロスカップリング反応により炭素-硫黄結合の活性化を経由したアリール基の導入にも成功した。最近ではスルホニルヘリセンからパラジウム触媒によりジアリールチオフェンジオキシドに変換できることや一電子還元剤を用いることでジアリールチオキサンテンジオキシドが得られることを見出しつつあり、更なる応用として含窒素パイ拡張ヘリセンへ変換できるよう検証を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、スルホニル基を脱着自在な配向基として利用した四置換オレフィンの一段階合成法の開発を目指して研究に取り組んでいたが、三置換エテニルスルホンの光反応性を調査していく過程でエテニルスルホンがヘリセン骨格の構築において特に有用であることが明らかとなった。そのため現在では「スルホン特有の電子的特性・脱離特性を利用したヘリセンの多官能基法の開発」に注力し研究を進めている。研究内容としては当初の計画とは少し異なるものの、実用的かつ応用が期待できる研究成果が得られたことから「おおむね順調に進展している」と判断した。得られた研究成果はスルホニル基置換ヘリセンの合成とスルホニル基変換による多官能基化ヘリセンの合成に大別されるが、前者では、ベンジルスルホンと芳香族ジアルデヒドとのアルドール縮合型反応によりビス(スルホニルエテニル)アレーンの合成と、続く紫色LED照射下でのMallory環化によりスルホニル基置換ヘリセンを得ることができた。なおスルホニル基を持たない1,4-ジスチリルベンゼンでは溶解性に乏しく効率良くMallory環化が進行しなかったことから、エテニルスルホンがヘリセン骨格の構築において有用であることが明らかとなった。また後者では、得られたスルホニル置換[4]ヘリセンをモデル基質に取り上げ、スルホニル基の変換法を検討したところヨウ化サマリウムを用いた還元的脱スルホニル化やニッケル触媒とグリニャール試薬を用いたクロスカップリング反応など、スルホニル基を脱離基として利用した新たな有機合成反応の開発に成功しつつある。現在は、これら変換反応から様々な官能基化ヘリセンを合成し、光学特性の評価から新たな機能性化合物の創出も目指し、研究を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度において、スルホニル基が置換した[4]-[6]ヘリセンに加え、[7]ヘリセンの合成法も確立し、スルホニル置換ヘリセンの基質適用範囲を調査する。また得られたスルホニル置換ヘリセンの変換反応の反応条件を最適化し、基質適用範囲の調査及び基礎物性の解明に取り組む。これらの成果をまとめ、研究の総括と今後の展開に向けて準備を進める。今後の実施内容については、以下の通りに計画している。 (1)スルホニル置換ヘリセン誘導体の合成 これまでに[4]-[6]ヘリセンの合成には成功しつつあるが、更に縮環数の多い[7]ヘリセンなど環歪みの大きならせん化合物を合成できる反応条件を調査し、非対称[7]ヘリセンを含めた様々な誘導体の合成を検討する。また最近[6]ヘリセンについてはX線結晶構造解析からその構造の同定を行っており、[4]、[5]、[7]ヘリセンについても同様にX線結晶構造解析から構造の同定を執り行う。 (2)多官能基化ヘリセン誘導体の合成 昨年度で条件を最適化したニッケル触媒とグリニャール試薬を用いたクロスカップリング反応を利用して様々なグリニャール反応剤やスルホニル[n]ヘリセンを検討し、基質範囲の検討を行う。また最近では、スルホニル[4]ヘリセンからパラジウム触媒を用いた縮環反応によりジアリールチオフェンジオキシド、一電子還元剤を用いることでジアリールチオキサンテンジオキシドに変換できることを見出しつつあり、更なる応用として含窒素パイ拡張ヘリセンへの変換にも取り組む。さらにこれらの変換反応で得られた多官能基化ヘリセンの光学特性および電気化学特性などの基礎物性を明らかにする。これらの内容をまとめ上げ、本年度中に学術論文として公表することを目指す。
|