2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の自己凝集化技術による生体汗腺模倣組織体の創出と応用開拓
Project/Area Number |
22J40135
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
岩井 麻理菜 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | オルガノイド / 汗腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
汗腺は汗の通り道である導管部と汗の分泌腺に分けられ、導管部は管腔細胞と基底層細胞から、分泌腺は管腔細胞と筋上皮細胞から構成される。分泌部から同定された汗腺幹細胞を3次元の凝集塊にして培養すると中空構造を有する球形の汗腺様組織体を形作ることが報告されたが、汗腺は細長いファイバー状の管腔構造体であり、単に中空構造を持つ球形の汗腺様組織体とは構造的に大きく異なる。本研究では、汗腺幹細胞凝集塊の形状を制御し得る細胞操作技術として、細胞の自己凝集化技術(Cell self-aggregation technique: CAT)を汗腺幹細胞に応用することで、中空ファイバー構造を有する生体汗腺模倣組織体を創出することを目的とした。 令和4年度は、中空ファイバー構造を有する汗腺模倣組織体の作製に向け実験材料の調整を行った。生体の汗腺から幹細胞を含む汗腺構成細胞の採取および調整を試みたが、既存の汗腺幹細胞の分離方法では、分離効率が低く、汗腺模倣組織体形成に必要な十分量の汗腺幹細胞の分離には至らなかった。そこで、汗腺幹細胞を効率的に分離し、そのまま汗腺オルガノイドを形成させ得る方法を新たに考案し、従来の細胞分離効率を大幅に改善できる可能性を見出した。一方で、汗腺と類似した機能と構造を有する乳腺上皮細胞と間葉系細胞をモデル細胞として用いて、CATによる細胞の自己凝集化が誘導される条件を最適化した。その結果、上皮細胞と間葉系細胞の混合凝集塊を得ることに成功し、形状をファイバー状にできることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体汗腺模倣組織体を形成するために必要な実験材料の調製として、参考文献の方法に準じて汗腺組織からの汗腺幹細胞の分離とオルガノイド形成を試みた。しかし汗腺幹細胞の分離効率は極めて悪く、細胞の自己凝集化技術(Cell self-aggregation technique: CAT)を用いた汗腺模倣ファイバー状組織体の作製を検討することはできなかった。そこで、汗腺幹細胞を効率的に分離し、そのまま汗腺オルガノイドを形成させ得る新規の「細胞分離・オルガノイド形成法」を考案し、従来の細胞分離効率を大幅に改善できる可能性を見出した。一方で、汗腺と類似した機能と構造を有する乳腺上皮細胞と間葉系細胞をモデル細胞として用いて、CATによる細胞の自己凝集化が誘導される条件を最適化した。その結果、上皮細胞と間葉系細胞の混合凝集塊を得ることに成功し、形状をファイバー状にできることを確認できた。 以上より、モデル細胞を用いたファイバー状凝集体形成の基礎検討、および細胞分離効率の高い汗腺幹細胞分離方法の検討はできたが、汗腺構成細胞による凝集体形成の検討に至らなかったことから、本研究課題は(3)やや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.新規に考案した汗腺幹細胞の分離法を用いてファイバー状組織体を作製するための十分量の汗腺幹細胞を確保する 2.モデル細胞にて最適化したCATによる上皮と間葉系細胞の混合凝集塊の形成条件を汗腺構成細胞に応用することで、ファイバー状の汗腺細胞凝集塊を作製する 3.ファイバー状汗腺細胞凝集塊の中空ファイバー構造体への自己組織化を誘導する培養条件を最適化し、生体汗腺模倣組織体の創出を達成する 4.創出した汗腺模倣組織体の移植実験による組織再生評価を実施する
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