2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Role of Speech Perception and Production in Sound Change: A Case Study of Kagoshima Japanese
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22J22198
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
神谷 祥之介 福岡大学, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 言語変化 / 鹿児島方言 / 音声産出 / 音声知覚 / 促音 / 持続時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、現在言語変化の過程にある鹿児島方言に対して実験音声学的立場からの調査を行い、一般的な言語変化のプロセスおよび、それに際する音声産出と知覚の役割の解明に貢献することを目指すものである。具体的には、高年層と若年層の話者を対象とした音声産出/知覚実験を行い、両者の音節の時間制御(とりわけ重子音の有無による母音持続時間の変化)の特徴を比較する。 令和4年度は、鹿児島方言話者の若年層と高年層に対する音声産出実験を行ってデータを収集するとともに、促音の有無に伴う先行母音、および、後続母音の持続時間の変化に関する分析を行った。その結果、今回の実験で得られたデータに関しては、高年層であっても伝統的な鹿児島方言とは異なる特徴を示した参加者や、若年層であっても伝統的な特徴を保持していると考えられる参加者が混在していた。この結果が今回の被験者に特有なものなのか、または、鹿児島方言話者に一般的に通ずる傾向なのかを現段階で断定することはできない。しかしながら、令和5年度以降に行う調査では、年代別の分析に加えて個人の音声産出と音声知覚がどのように対応しているのかという点も考慮しながら分析を行う必要があることが示唆された。 また、本研究課題に今後関わる可能性があるデータの収集、および、分析も令和4年度に行った。具体的には、福岡方言話者を対象とした音声産出実験を行い、子音(閉鎖音)が有声か無声かによって、それらに先行/後続する母音の持続時間がどのように異なるかどうかについて調査した。その結果、①母音が短母音か長母音かに関わらず、有声子音に先行する母音の持続時間は無声子音に先行する母音よりも長くなる②直前の音節内の母音が長母音か短母音に関わらず、有声子音に後続する母音の持続時間は無声子音に後続する母音よりも長くなることが判明した(なお、この内容は共同研究として令和5年度に国際学会で発表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、議論の基盤を固めるために福岡方言や他の言語に関する調査・分析を令和4年度に行う予定であったが、研究計画を変更して鹿児島方言に対する調査を先に実施した。これはCOVID-19による規制が当初の予想よりも早く緩和したこと等を考慮した判断であった。しかし、調査を進めていく中で、実験に参加可能な鹿児島方言話者の募集が難航したことや、予備実験の結果から実験デザインを再検討する必要性が浮上したこと等が原因となり、本研究課題の調査に少々の遅れが生じた。ただし、大規模な実験を実施する前に問題点に気づくことができ、そこから得られた新たな知見を翌年度以降の調査に取り入れることができる点や、共同研究によって今後本研究課題に関与する可能性のある予定外の成果が得られた点を踏まえると、本研究課題は当初の研究計画に照らしてみればやや遅れ気味ではあるが、総合的に見ればおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、前述の予備実験の結果や問題点を考慮しながら実験デザインを最終決定し、引き続き鹿児島方言の若年層と高年層話者の音声産出のデータ収集・分析を行いながら、知覚実験も合わせて実施していく予定である。これによって得られる若年層と高年層の話者の結果を比較し、鹿児島方言における音節の時間制御に見られる変化が音声産出と音声知覚のどちらから起こるのかについて検証し、言語変化のプロセス解明に努める。また、鹿児島方言話者に対する実験・分析が完了次第、モーラタイミングの方言である東京方言、もしくは、福岡方言の話者にも同様の実験を行い、鹿児島方言との比較を行いたい。
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