2022 Fiscal Year Annual Research Report
移動性分子による経世代的エピジェネティック伝達の制御機構の解明
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21J00139
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
筒井 大貴 沖縄科学技術大学院大学, 植物エピジェネティクスユニット, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / シロイヌナズナ / 環境応答 / ストレス / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シロイヌナズナへのストレス処理によって誘導されて世代を越えて伝わるエピジェネティックな修飾の確立過程を時系列で捉えることを目的としている。そのためには、少数の細胞もしくは核から、全ゲノム規模のDNAメチル化解析を行う必要がある。しかし、RNAと違ってDNAは1細胞あたりの量が非常に少なく、これまでは技術的に困難であった。 本年度は、シロイヌナズナ卵細胞をモデルケースとして、少数細胞からのDNAメチル化解析技術の改良と、卵細胞におけるDNAメチル化プロファイルの詳細な解析を行った。研究代表者は、これまでもバイサルファイト法を用いて卵細胞の全ゲノムメチル化解析を実施していたが、得られたリードのマップ率やゲノムに対するカバー率は低く、改良が必要であった。そこで、本年度は、近年開発された酵素変換法による全ゲノムメチル化解析を試みた。酵素変換法は、TET2およびAPOBECと呼ばれる2つの酵素を使い、非メチル化シトシンをウラシルに変換することでシトシンにおけるメチル化の有無を判定する方法である。バイサルファイト法に比べて穏やかな条件で反応を行うことができるので、DNAの分解が少ないとされている。その結果、バイサルファイト法に比べて高いマップ率が得られ、シーケンスデータあたりのゲノムカバー率も高かった。また、卵細胞で発現しているメチル基転移酵素の変異体からも卵細胞を回収し、シーケンスを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素変換法によるDNAメチル化解析を実施し、バイサルファイト法に比べて質の良いシーケンスデータを得ることができた。これにより、少数の細胞から全ゲノムDNAメチル化解析を実施する基盤が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた、野生株およびDNAメチル基転移酵素変異体における卵細胞のDNAメチル化解析のシーケンスデータを詳細に解析し、卵細胞におけるDNAメチル化のプロファイルを明らかにし、卵細胞のゲノムがエピジェネティックにどのような制御を受けているかを解明する。 また、これまでに確立した少数細胞からのDNAメチル化解析技術を用いて、ストレス処理した植物個体の生殖細胞や茎頂分裂組織を回収し、ストレスによるDNAメチル化パターンの時系列的な変化を捉える。
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