2023 Fiscal Year Research-status Report
根粒菌の植物共生能に関与する大規模なゲノム再編成メカニズムの解明
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22KJ3119
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
原 沙和 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 温室効果ガス / 根粒菌 / N2O / 脱窒 |
Outline of Annual Research Achievements |
根粒菌は窒素固定の他に、硝酸から窒素ガスに還元する「脱窒」反応も行う。脱窒の中間産物である一酸化二窒素(N2O)は強靭な温室効果ガスであるため、脱窒の一部であるN2O還元能は応用の観点から注目されている。また根粒菌B. ottawaenseは従来種(B.diazoeffciens)に比べてN2O還元活性が高いことが観察されており、本年度はこのB. ottawaenseのN2O還元活性について、メカニズムの解明と論文化に注力した。 B. ottawaenseについて、培養菌体および抽出タンパク質のN2O還元活性を詳細に比較したところ、従来種B. diazoefficiensに比べて5~8倍高いことが明らかになった。さらにN2O還元を担う酵素(nosZ)の発現量を比較したところ従来種の150~200倍も高発現していることがわかった。この高発現化の原因を明らかにするために既知のnosZ制御遺伝子に注目しながらゲノム比較や実験的手法を用いて検討したが、高発現を引き起こす原因は特定できなかった。一方でB. ottawaenseはB. diazoefficiensと異なり、nosオペロンのプロモーターを2つ保有することが明らかになった。よってこの2つのプロモーターによる転写制御の違いがnosZの高発現化に影響している可能が考えられた。以上の内容をまとめて論文化し出版した。さらに本年度はB. ottawaenseのnosオペロンのプロモーター配列とnosZの高発現化の関連について、遺伝子組換体を用いた解析計画を立てるところまで進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では本年度は根粒菌の窒素固定能や根粒形成能を司るゲノム領域「共生アイランド」の水平伝播現象の実証実験とメカニズムの解明を行う予定であった。しかしながら検出系の構築に時間がかかってしまい予定通りに進めることができなかった。一方で研究対象としていた根粒菌B. ottawaenseのN2O還元能およびメカニズムについて重要性の高い現象が観察できたので、本年度はその研究推進に注力した。よって「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り根粒菌B. ottawaenseのN2O還元能とメカニズムについて新規性の高い現象が観察されたため、今後もその研究を推進する予定である。また当初予定していた根粒菌の遺伝子水平伝播について、検出系の構築を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は妊娠・出産のため2023年9月~12月まで中断したため予定額を使い切ることができなかった。また予定していた学会への参加も難しかったため、その分の旅費も含めて次年度使用額として繰り越した。
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