2023 Fiscal Year Research-status Report
メンブレンベシクルゲノム解析による根圏細菌間相互作用の解明
Project/Area Number |
22KJ3147
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
島崎 智久 北海道大学, 大学院教育推進機構, 助教
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | メンブレンベシクル / ゲノム解析 / 遺伝子水平伝播 / Arthrobacter |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では細菌が生産するメンブレンベシクルに着目し、その植物根圏における細菌間遺伝子水平伝播への関与を明らかにすることを目的としている。前年度に取得したタバコ根圏細菌のゲノム配列を用いた比較解析から、Arthrobacter属細菌においてニコチン分解遺伝子群をコードしたplasmidが本細菌種間において水平伝播していることが示唆された。そこで、遺伝子組換えによってArthrobacter属細菌を選抜する系を構築し、mating試験を行ったところ、in vitro 条件におけるplasmidの水平伝播が確認された。今後、このplasmidがメンブレンベシクル中に含まれているかを調べることで、本現象へのメンブレンベシクルの関与を調べていく予定である。 また、シロイヌナズの免疫応答を干渉する機能が報告されているRhizobium属細菌から単離したメンブレンベシクルを接種したシロイヌナズのトランスクリプトーム解析を行ったところ、フラボノイドの生合成遺伝子の発現が上昇していることが明らかになった。今後、本現象の再現性を確認するとともに、詳細なメカニズムを明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
根圏土壌からのメンブレンベシクルの抽出ができなかったため、当初予定していたメタゲノム解析が行えず、メンブレンベシクルを介して細菌間を移動する候補遺伝子の決定が困難となっている。一方、Arthrobacter属細菌のニコチン分解が水平伝播することがin vitroにおいて確認できたため、今後は本現象へのメンブレンベシクルの関与や、in plantaにおける挙動を調べていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Arthrobacter属細菌のニコチン分解遺伝子の水平伝播におけるメンブレンベシクルの関与を調べる。具体的には、Arthrobacterの培養上清から単離したメンブレンベシクル中にニコチン分解遺伝子が含まれているかを、PCRやメタゲノム解析を行い調べる。実際に遺伝子の存在が確認された場合はrecipient株にメンブレンベシクルを混ぜた状態で培養し、水平伝播が起こるかを検証する。 また、シロイヌナズナを用いた評価系により、メンブレンベシクルがシロイヌナズナのフラボノイド合成系に影響を与えていることが示唆された。今後は本現象の再現性を取るとともに、メンブレンベシクルに含まれる本現象の原因分子の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
当初予定していたメタゲノム解析のためのサンプル調製が遅れているため、計上しなかった。 来年度は、サンプル調製ができた場合、その解析費用を計上する予定である。また、現在投稿準備中の英語論文の校正及び投稿料を計上する予定である。
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