2023 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症者の刺激の時間情報処理に関する柔軟性の低下と事象間の因果知覚の頑健性
Project/Area Number |
22KJ3150
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
金子 彩子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / ASD / コミュニケーション / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
時間に関する知覚は、事象間の因果関係や連続性の理解や他者とのコミュニケーションに重要な役割を持つ。時間の知覚は常に一定であるよりも変化しやすいことが知られており、非同時な視・聴覚刺激であっても繰り返し提示されることで、刺激間の時間差に順応し、同時だと感じる点(主観的同時点)が移動する。したがって、円滑に外界の状況を理解するために、人は情報の時間に関する処理のスタイルを柔軟に変化させていると考えられる。一方で、そのような時間差への順応は自閉スペクトラム症(ASD)者では起こりにくいことが報告されている。このことから、ASD者の適応性の個人差には時間情報処理の動的な変化の生じにくさが関係すると予想した。本研究では、ASD者における知覚的な時間情報処理に関する変動の生じにくさが、外界の状況の理解を阻害する一因となるかを検証することを目的とした。令和5年度は昨年度に引き続き、言語コミュニケーションにおける時間処理様式として発話速度の知覚に着目した。発話速度が自分と同じ者に対する印象は好意的になりやすく、また違う発話速度の者に対しては自身の発話速度を同調させる傾向が知られている一方で、ASD者はそのような同調が生じにくいと報告されている。ASD者における同調の生じにくさが、他者の発話速度の違いに気がつきにくく、印象が変化しにくいことから生じると仮説を立て、検証を行った。現在までに定型発達者16名、自閉スペクトラム症者14名分のデータを取得した。違う速度の刺激に対する同調の生じやすさ・発話速度の違いへの気がつきやすさ・発話速度の違いに伴う印象の変化に群差は見られなかった。一方で、ASD者は発話速度がより遅く、また遅い発話速度と社会的場面での適応的な振る舞いに関する難しさと関連した。これらのことから、発話の速度の違いが他者との関わりに重要な役割を持つことが示唆された。
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Research Products
(1 results)