2022 Fiscal Year Annual Research Report
膀胱癌の発癌・悪性化過程における腫瘍遺伝子変異と腫瘍免疫応答の関連の解明
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22J01640
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
尾張 拓也 国立研究開発法人国立がん研究センター, 国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター 免疫TR分野, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 膀胱がん / BBN / 自然発がん / 免疫チェックポイント阻害剤 / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト膀胱がん手術検体ならびに N-Butyl-N-(4- hydroxybutyl)nitrosamine (BBN)誘導膀胱がんマウスモデルを用い、膀胱がんの発がん・悪性化過程における免疫療法に対する耐性獲得機序を解明することを目的とした。まず、BBNにより誘導されるマウス膀胱がんの発がんおよび悪性化過程の遺伝子変異・遺伝子発現の変化の解析を RNAシークエンスならびに whole exome sequence (WES)により網羅的遺伝子解析を行った。その結果、BBNを12週投与時点から膀胱がんの発がんを確認し、20週の投与までに経時的に腫瘍は悪性化を認めることを確認した。腫瘍遺伝子変異に関しては、膀胱がんの TCGA データベースとの比較を行ったが、BBNで誘導される膀胱がんは、TTNやTP53をはじめとしてヒト筋層浸潤性膀胱がんと類似した遺伝子変異を認めた。さらに、RNAシークエンスの結果から、16週以上の投与により、ヒト膀胱がんにおいてより悪性度の高いとされる Basal-Squamous subtype の腫瘍を形成することを明らかとした。 BBNを18-20週投与した個体に対して抗PD-1抗体を投与し、奏功・非奏効個体における網羅的遺伝子解析を行い、Basal-Squamous subtype膀胱がん特有の免疫チェックポイント阻害剤の耐性に関与する遺伝子発現の比較を行った。ヒト膀胱がんにおける免疫チェックポイント阻害剤の有効性を検証した臨床試験データと共通した治療抵抗性に関与する特有の遺伝子発現変化を同定したため、これらの遺伝子のがん免疫療法耐性メカニズムの解明を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、BBN誘導マウス膀胱がん自然発がんモデルを用いた膀胱がん発がん・悪性化過程における遺伝子変異・遺伝子発現変化の詳細な解析を行い、同モデルがヒト進行性膀胱がんと遺伝子変異が極めて類似しており、BBNの長期投与により悪性度の高いとされるBasal-Squamous subtype 膀胱がんを形成することを確認した。同モデルを使用することにより、Basal-Squamous subtype膀胱がんの発がん機序の解明や同サブタイプにおける免疫チェックポイント阻害剤耐性機構の解明につながることが予想され、研究計画は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫チェックポイント阻害剤を使用したヒト膀胱がん手術検体を用いて、RNAシークエンスによる遺伝子発現解析ならびに腫瘍浸潤リンパ球をフローサイトメトリー、多重免疫染色により解析を行い、これまでに同定した候補遺伝子と共通する遺伝子発現変化が膀胱がんの腫瘍微小環境における免疫応答にどのような影響を与えるかを検討していく。また、BBN誘導膀胱がんマウスモデルから樹立した細胞株に対して、レンチウイルスを用いた候補遺伝子の高発現株の作製を行い、免疫逃避ならびに免疫チェックポイント阻害剤抵抗性機序の解明をすすめる。
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