2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J01516
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
下迫 直樹 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 宇宙機 / コンタミネーション / 光触媒 / 二酸化チタン / 真空 / アウトガス / 水晶振動子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は,1年目に作製した真空装置を用いて,宇宙機のアウトガス成分のひとつであるオレアミドに汚染された光学ガラスの透過率変化を測定した.光学ガラスにオレアミドを真空蒸着させ,その光学ガラスの透過率変化と時間経過による影響を調べた.その結果,オレアミドは真空環境下,室温においてわずかに蒸発し,その蒸発によって試料表面のオレアミドはfilm likeからflake likeに構造が変化することがわかった.蒸発によって試料表面に存在するオレアミドの量は減少しているにもかかわらず,flake likeになった結果,散乱強度が増加し,オレアミドで汚染された光学材の透過率が著しく低下することを解明した.
また,水晶振動子(QCM)電極上に二酸化チタン粒子をバインダーによって固定化し,その試料にクエン酸を真空蒸着させ,QCMの固有振動数の変化からクエン酸の質量減少量,つまり,二酸化チタンの光触媒活性を見積もった.大気中では,付着させたクエン酸を完全に分解することができた.真空環境下においても,クエン酸を分解することができ,真空環境下における分解量は,一般的な人工衛星のEnd of Lifeでのコンタミ許容量に匹敵する量であった.このことから,一般的な光触媒材料である二酸化チタンでも,クエン酸が分解対象であれば,真空環境下において十分な光触媒活性を有しており,宇宙応用に有望であることを示した.また,QCMを用いた光触媒活性の評価は真空環境下において有効な手法であることも示した.
これらの研究の他に,竹を原料したセルロースナノファイバー(CNF)のアウトガス特性を調べた.その結果,竹由来のCNFからは有機物のアウトガスが放出されず,水の放出のみが確認された.この結果から,竹由来のCNFはアウトガス低減の新規有機材料として,期待できることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1種類の汚染物質に対する光触媒活性の評価し終えたため,(2)の達成度だと判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
宇宙機から放出される異なる汚染モデル物質を用いて、光触媒活性の定量的な評価を行い,汚染物質の化学構造に対する影響を調べる.また,実際の汚染源を用いた実験も行う.温度調整可能な水晶振動子を用いて,接着剤などの実際に使用されている宇宙機の有機材料を加熱し,そのアウトガス成分に対する光触媒材料を評価する.
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