2023 Fiscal Year Research-status Report
光合成細菌の誕生が初期地球化学合成生態系に与えた影響の実験的検証
Project/Area Number |
22KJ3200
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
河合 繁 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 好熱性細菌群集 / 微生物 / 菌叢解析 / GC含量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古地球の生物群集における光合成の誕生が与えたインパクトを検証することを目的としている。高温だった初期地球表面と類似した温度環境を備える温泉では、原始的な代謝を持つ細菌生態系が発見されている。温泉環境では、高温の温泉水が地表面を流れながら冷却されることで温度勾配が形成され、そこに多様な好熱性細菌生態系が発達する。好熱性細菌群集は、還元的無機物を電子供与体として利用し、炭酸固定により独立栄養的に生育する光合成細菌や化学合成細菌と、それらが作る有機物を利用する共存細菌から構成される。温泉光合成水が75°C付近では乳白色の化学合成細菌群集が、65°C付近では緑色の光合成細菌群集(Chloroflexus属細菌が優占)がそれぞれ発達している。2種の細菌群集の中間(70°C付近)には、「光合成細菌と化学合成細菌が混ざった細菌群集」が発達する。そのような群集では、化学合成細菌と光合成細菌間での電子供与体の獲得競争や、生産される有機物種の変化に伴う共存細菌のニッチ変化が起きていると想定される。 本年度では菌叢解析において好熱性群集に特有と考えられるバイアスの存在を確認した。優占種と考えられる微生物の検出率がバイアスにより極端に低く見積もられた。複数のデータセットを用いた相関解析によりその原因が配列のGC含量に起因することを明らかにした。また、バイアスを軽減する方策を提案することができた。それらを論文にまとめ現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
適切な菌叢解析の条件検討に予想外の時間を要した。しかし様々な試行錯誤を重ねたことで好熱性細菌群集を対象とした菌叢解析における現代技術の弱点や気をつけるべきポイントを網羅的に解明出来たと考えている。今後は得られた知見を活用して菌叢解析を進め、光合成細菌の出現による共存微生物組成の変動をより詳細に解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
同時並行に進めていた環境中で光合成細菌と化学合成が少しずつ入り交じるヘテロな微生物群集が発達可能な環境づくりについて、物理化学パラメータの異なる複数の環境において群集の発達を確認している。今後はそれらのサンプリングと菌叢解析を進め、光合成細菌の出現に伴って増殖する微生物種の同定を行う。さらにそれらのゲノム情報から代謝情報を読み解き、環境中で光合成細菌と共役的に機能する微生物代謝を明らかにする。
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Causes of Carryover |
学術条件整備の交付決定の一部取消により返還手続きを実施済み。
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