2023 Fiscal Year Research-status Report
群体性珪藻の連鎖形成機構の解明:粒子サイズ可変餌料の開発へ向けて
Project/Area Number |
22KJ3203
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
山本 慧史 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(南勢), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 微細藻類 / 飼餌料 / RNA-seq / 固相培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は群体性珪藻の連鎖機構の解明を通じ,粒子サイズを随意に変えられる新しい餌料生物の開発を目指すものである。本年度は,群体性珪藻Skeletonema costatumを用いた以下の試験を実施した。昨年度の試験結果より,培養中にS. costatumの連鎖が崩壊する主な原因は,液相培養中に発生する水流等の物理的な負荷が主な要因であることが予想された。そこで,本種を物理刺激の少ない平板培地上でコロニー化させることによって長連鎖細胞の採取を試みた。S.costatumは,微細藻類の固相培養で一般的に使用される窒素,リン,金属塩類,ビタミン類を含む固相寒天培地上ではコロニー化しなかったが,ここにカゼインおよび大豆粕の酵素分解産物を主な供給源とした各種アミノ酸を添加することで,最大長径が約1,000 μmのコロニーを作成することに成功した。この粒子サイズは,当初目標としていた200μmを大幅に超える大きさである。このコロニーについて,RNA-seq解析により液相培養細胞との発現遺伝子の網羅比較を行ったところ,4458個の発現変動遺伝子が得られた。次年度では,この発現変動遺伝子に対してエンリッチメント解析等のより詳細なデータ解析を実施し,上記の発現変動遺伝子の機能解析を進める予定である。一方,上記の研究と並行して実施していた,微細藻類の餌料価値を判断するための遺伝子マーカーの探索作業において,フィコエリスリンβサブユニット遺伝子cpebが候補遺伝子となることを示し,この結果についてAlgal Research誌に論文を投稿,受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年度から前倒しで実施したRNA-seq解析であったが,Skeletonema costatumの固相培養条件の検討に想定以上の時間を要し,結果として本年度に目標としていたエンリッチメント解析等の下流解析を完結させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度のRNA-seq解析によって得られた連鎖細胞および非連鎖細胞間の発現変動遺伝子について,エンリッチメント解析による機能推定を行い,連鎖の遺伝背景を探る。なお,Skeletonema costatumについてはアノテーション情報が不足しているため,同じ珪藻類で且つ公共データベースにおけるゲノム情報が充実しているPhaeodactylum tricornutumについても,同様のRNA-seq解析を現在実施している。S. costatum及びP.tricornutum両者の発現変動遺伝子及びその機能を比較することで,連鎖形成に関与する候補遺伝子を探索する。候補遺伝子については,crisper-cas9システムによるノックアウトを試み,目的機能との関連を調査する予定である。なお,エレクトロポレーターを用いたcrisper-cas9研究の実験環境については昨年度に整備が完了した。
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