2022 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of indoor environment in long-term care facilities on various symptoms of elderly people with dementia
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22J12896
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
奈良 玲伊 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 介護施設 / 温熱環境 / 光環境 / 季節変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、主に介護施設での計測機器を用いた入所高齢者の生理量計測・施設内温熱、光環境の指標計測を行ない、得られたデータを随時分析した。調査対象協力施設では、新型コロナウイルスのクラスター発生や、外部関係者の入構禁止など、新型コロナウイルス感染症流行に伴ういくつかの制限によって一部データの取得ができない期間があったが、年間を通した被験者・環境データを取得することができた。 得られたデータの内、今年度は夏期・冬期・中間期、3つの期間についてそれぞれ、入所高齢者の居室環境の変動、さらに、環境と入所高齢者の生理指標の関連について着目し分析を行なった。その結果、夏期の対象施設では、比較的適切な冷房による空調管理がなされており、期間のほとんどが高齢者の睡眠に適切な温湿度を保っていることが明らかとなった。入所高齢者の睡眠の質については、居室環境との統計的有意な相関関係は確認されなかった。対して、冬期には居室内の時間による温度幅が暖房の使用有無に応じて大きく、湿度は適正とされる基準値を大幅に下回っており、睡眠の質も温湿度との相関関係が確認されたことから、特に冬期の環境整備について周知を徹底する必要性が示された。また、気候が暖かくなり始める中間期である3月の居室内室温に着目し、1月・2月の居室内室温と比較すると、外気温度は高いにも関わらず3月の居室室温が1月・2月よりも低いことが明らかとなった。これは、空調管理を担う介護職員の暖房の使用方法の変化に起因すると考えられ、冬を超えた時期の空調使用を積極的に行なうよう、周知を行なう必要性が示された。 今後は、年間の季節変動を考慮した、通年データを用いたより詳細な分析を実施し、介護施設内の環境が認知症を患う入所高齢者の健康に与える影響について定量化を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの流行により、研究協力施設に立ち入りができない期間が一部あったが、通年での介護施設における環境データ・高齢被験者の生理データの取得ができた。また、得られたデータについて随時季節毎の分析を行ない、外気温が高くなり始める3月頃に居室内は最も寒冷になっていること、ベッド周辺の日中の明るさが夜間の睡眠に影響を与えていることなど、いくつかの新たな知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として令和5年度は、①令和4年度の新型コロナウイルス流行の影響により一部欠損が生じたデータを補うための実測調査の再実施、②令和4年度に得られたデータの季節別および季節変動を考慮した通年の分析を行なう。 上記の方策の遂行にあたっては、以下の対応策を考えている。 ①新たな協力介護施設において、昨年度よりも被験者数を増やした上で、より詳細なデータを得るために学生アルバイトの協力を仰ぎ介護職員への詳細な聞き取り調査を並行して実施する。 ②得られているデータについて、既に分析に着手している夜間の睡眠の質と居室内の温熱・光環境の関連に加えて、日中の活動量やうたた寝の頻度と環境指標の関連など、より認知症のBPSD症状との関連が深いとされる生理量について詳細な分析を実施する。
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