2023 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀における学術ネットワークの展開とアジア・太平洋戦争における大量死問題
Project/Area Number |
22KJ3233
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 真生 名古屋大学, 人文学研究科, 助教
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 帝国 / 軍陣医学・軍陣衛生学 / マラリア / 台湾 / 看護卒 / 軍事医療時計 / 陸軍 / 学知 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、第一にオンライン上にて、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストリアの『軍医団雑誌』に相当する史料の悉皆調査を行い、各国と日本の軍事医学を通じた関係や各国における日本の学知の位置づけについて検討した、それぞれの国の軍事医学的水準や他国の関係性によって、日本関係記事の多寡は規定されていたと考えられるが、日清戦争、北清事変以降から段階的に日本の学術上の位置づけが高まっていたことがうかがわれた。この検討の成果の一部は、岡山地方史研究会において「明治期日本陸軍衛生部の国際進出-軍事医学•軍事衛生の帝国間相互補完関係への参入」として報告し、加筆・修正したものを学会誌に投稿した。 また、今年度は植民地に関する分析も進め、日本帝国圏における学術ネットワークの分析にも着手した。主に検討したのは台湾におけるマラリア対策についてである。台湾領有以後の日本陸軍では、台湾の熱帯マラリアが帰還兵を通じて内地部隊にも伝播し、マラリア患者が急増する事態に陥っていた。このような状況のため、台湾におけるマラリア研究は陸軍におけるマラリア対策の最前線となり、かつ内地においても活発にマラリア研究の成果が蓄積され、台湾と内地が有機的に結びつきながらマラリアの学知が蓄積されていった。こうした陸軍における外地と内地の「近さ」は、後に植民地となる朝鮮や満州における医療基盤の構築を考えるうえでも重要になると考えられる。この成果は、日本植民地研究会にて報告し、学会誌に投稿した。 以上のほか、今年度は上等看護卒に関する分析を行い、「明治末期における一兵卒の上等看護卒への道のり―「森田義雄氏関係史料」を材料に‐」(『大阪の歴史』(95))として発表することが出来た。 これら一連の研究を通じて、日露戦争期以降の見通しを立てることができたので、今後研究していくこととしたい。
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