2022 Fiscal Year Research-status Report
極限定常磁場下での精密熱輸送測定の実装とエキゾチック凝縮相の物性開拓
Project/Area Number |
22KK0036
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
笠原 成 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (10425556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木原 工 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (80733021)
今城 周作 東京大学, 物性研究所, 特任助教 (30825352)
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Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2028-03-31
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Keywords | 強磁場物性測定 / 熱輸送 / 強相関電子系 / エキゾチック凝縮相 / ハイブリッド磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関電子系で実現する特異な量子凝縮相や新奇電子状態の探索と解明は、凝縮系物理学における中心課題の一つである。本研究では、強磁場における物性測定、特に、オランダ・Nijmegen 強磁場研究所での極限定常磁場下における未踏の熱輸送測定の実装と、これを基盤としたエキゾチック凝縮相の探索と解明に取り組むことを中心課題としている。本年度は、国内において研究準備を進めるともに、Nijmegen強磁場研究所のNigel Hussey教授との共同研究に取り組んだ。熱輸送測定セルの設計・開発を進めるとともに、鉄系超伝導体FeSe1-xSxについて、Nijmegen強磁場研究所での系統的な輸送現象測定をおこなった。これによって、FeSe1-xSxのx>0.17の非ネマティック相において、面平行磁場下での輸送現象測定から、渦糸格子が融解した渦糸液体状態が極めて低温の広い磁場温度領域に渡って存在していることが明らかになった。これは量子揺らぎにより渦糸格子が融解した量子渦糸液体状態がこの系において実現していることを強く示している。一方、FeSe1-xTexにおける強磁場測定との対比からは、FeSe1-xSxでの量子渦糸液体状態は、ネマティック相や磁気相の量子臨界揺らぎに起因するものではなく、超伝導状態そのものの"虚弱性"に起因していると考えらえることが明らかになった。これは非ネマティック相のFeSe1-xSxにおいて実現していると考えられるボゴリューボフ・フェルミ面、即ち、超伝導状態においてもクーパー対を組むことがない準粒子が創り出す特異なフェルミ面の存在が関連しているものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FeSe1-xSxにおいて、Nijmegen強磁場研究所での輸送現象測定により、量子渦糸液体状態の存在が明らかになってきた。この研究成果について、現在、論文を投稿中である。また国内における熱輸送測定セルの設計等も進んでおり、研究は概ね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
輸送現象測定、比熱測定、熱輸送測定を駆使することにより、FeSe1-xSxにおける強い超伝導揺らぎの存在と量子渦糸液体状態の特徴を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
消耗品に関する支出が当初の想定よりも少なく抑えられたため。
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Research Products
(3 results)