2023 Fiscal Year Research-status Report
Eco-friendly management in direct-seeded rice systems for monsoon Asia using weed-competitive cultivars
Project/Area Number |
22KK0083
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 洋一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50463881)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 侑 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10964877)
内田 圭 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40747234)
郭 威 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70745455)
|
Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2027-03-31
|
Keywords | 直播稲作 |
Outline of Annual Research Achievements |
直播稲作における雑草成長がイネ収量に及ぼす影響への理解を深めるため、雑草-作物の競合下で雑草群落と作物群落を別々に受光量を推定する方法を考案した。その結果、C3種が優先する雑草群落では、作物と雑草の日射利用効率に差が無いこと、また、無除草下の作物の日射利用効率は除草下の作物と差が小さいことが初めて明らかとなった。すなわち、集約的な直播稲作において雑草-作物の競合がもたらす生産性の低下は主に光競合の結果積算受光量が低下することによる(日射利用効率は影響されにくい)ことが示唆された。さらに、同じ雑草群落成長量であっても、植物種構成がイネの収量に大きく影響することが示唆され、稲作における生物多様性と作物生産性の高度な調和を検討する際の鍵となると考えられた。次に、熱帯アジアの直播水田の植物多様性調査として、急速に移植から直播への栽培方式の切り替えが進むカンボジアに注目して調査研究を進めた。カンボジアのトンレサップ湖周辺および南部(タケオ・カンポート・プレイベン・カンポントム・シェムリアップ・バッタンバン)を中心に雨季作の水田生態系の植物種の予備調査を行った。日本では既に発見が珍しくなっている種も散見された。カンボジアでは同じ州内でも水田生態系が変化に富んでおり、そういった多様な水田生態系のランドスケープにおいて依然として生物多様性が高いことが観察された。直播水田であるか移植水田であるかという植付方式の違いや集約強度(水田農業の近代化がどの位進んでいるか)よりも、年間の湛水期間、土壌乾燥期間やその頻度といった水環境条件が植物多様性に大きく影響しているように見受けられ、この点にも着目した詳細な水田生態系調査計画を今後設計する必要がある。カンボジア水田生態系の植生調査を長年継続している現地研究者と連携を取ることができ、今後、情報交換を継続しながら植物種のリストアップを進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内試験は干ばつの影響に見舞われたが、収量調査まで無事に実施することが出来た。また、熱帯アジアの現地予備調査についても計画通り進めることができ、植物種情報の収集も進展した。
|
Strategy for Future Research Activity |
雑草競合耐性イネに関する作物生理解析については、今年度も試験を実施し、年次反復を取得する予定である。また昨年度、検出されたイネの茎伸長に関するQTL情報をもとに、準同質遺伝子系統の作出(BC4F1)を行う。また、直播稲作における雑草-作物の競合下の作物生産性の解析については研究取りまとめを進める。一方で、雑草-作物の競合下の作物生産性には、雑草群落成長量だけでなく、植物種構成がイネの収量に大きく影響することが示唆されたため、植物種ごとの生育モニタリングとイネ収量との関係について、調査規模を拡大して再検証を行う。また、この分野について、ヨーロッパの研究機関で近年精力的に展開している情報が得られたため、コンタクトを取って情報交換および共同研究の整備を進める。そして、モンスーンアジアの水田雑草のメタ解析については、メタ解析の材料となる情報がやはり不足していると判断されるため、得られている植物種情報をどのように取りまとめて活用するか、検討を進める。同時に、引き続き、カンボジア水田生態系を1つのモデルケースとして調査研究を継続する。
|
Causes of Carryover |
一部の稲作試験について、冠水被害やサンプル保存庫の故障が発生したため予定していた実験を断念せざるを得なかったことがある。また、当初予定していた他の実験についても、より簡便で安価な方向が途中で見つかったため、データ取得とデータ解析に想定よりお金がかからなかったことがある。熱帯アジアでのネットワーク構築および熱帯現地の水田生態系調査のための渡航はターゲットとする東南・南アジアの研究者との日程調整が依然として最大のチャレンジ要因である。国際共同研究のカウンターパートはかなり忙しく、日程調整は決して簡単ではない状況が続くが、対面での協議や擦り合わせとオンラインでの頻繁な確認(メールやオンライン協議)の組み合わせを進めていく予定である。
|
Research Products
(4 results)