2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of brain activity networks that prevent and ameliorate chronic pain and their therapeutic applications.
Project/Area Number |
22KK0180
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
大澤 匡弘 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (80369173)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Rebusi Romeo・Jr・Brioso 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 博士研究員 (30969689) [Withdrawn]
須永 圭紀 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 博士研究員 (40807640)
春田 牧人 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (40733663)
太田 淳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80304161)
|
Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2027-03-31
|
Keywords | 慢性疼痛 / Local Field Potential / 周期的脳活動 / クローズドループ制御 / 蛍光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛モデルマウスを作製し、その脳活動を腹側被蓋野(VTA)、海馬、帯状回皮質から取得した。長期的な測定を行う条件設定を行ったが、神経障害の処置後2週間程度で記録が不可能となり、大規模脳活動記録については、条件設定を行っている。また、先行研究で記録が完了している神経障害性モデルラットの大規模脳活動記録の結果を解析したところ、側坐核および下辺縁皮質におけるγ帯域周期的脳活動の発生頻度が上昇しており、神経障害性疼痛が持続するほど、その発生頻度が上昇することが分かった。つまり、痛みの持続により下辺縁皮質から側坐核へ伝わるγ帯域周期的脳活動の強度が強くなることが明らかになった。一方、CMOSセンサーを搭載した針型イメージングデバイスについては、側坐核における蛍光イメージングに成功し、神経伝達物質であるドパミンのセンサータンパク質を用いて、蛍光強度の変化を検出することに成功した。次に、側坐核における神経系細胞の活動をCMOSセンサーにより検出可能かを検証するため、アストロサイトと神経の一部にGCaMP7を発現するマウスを用いて検討を行った。GRINレンズを側坐核に刺入し、蛍光顕微鏡により麻酔下の動物での細胞活動を蛍光検出により記録を行った結果、側坐核の神経系細胞活動を記録することができた。これらのことから、側坐核へCMOSセンサーを刺入することで、蛍光イメージングが可能であることを明らかにすることができた。また、クローズドループ制御については、うつ病のモデル動物を用いた検討から、嗅球におけるγ帯域周期的脳活動の変化が側坐核へも影響を及ぼし、これがうつ様状態の発現に関係することを見出した。健常マウスにおけるγ帯域周期的脳活動を、うつ病のモデル動物へ注入すると、うつ様の症状が改善したことから、クローズドループによる脳活動の制御により、うつ病の症状を改善できる可能性を示唆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大規模脳活動記録では、マウスでの記録が失敗に終わったものの、ラットを用いた記録が達成されており、その脳活動を用いて解析を行うことができた。その結果、脳活動が変化している領域ならびに変化が見られる周期的脳活動を抽出することができた。今後、ラットの結果を用いて、イメージングによる神経細胞活動の同定を行うと同時に、自由行動下のマウスのモデルを用いて安定した脳活動記録が達成できるように、実験条件の調整を行う。CMOSセンサーを用いた検討では、蛍光イメージングにより神経系の活動を検出することが出、さらに、その解析のためのプログラムについても開発をすることができた。また、神経伝達物質の遊離について、各種依存性薬物を用いて、側坐核におけるドパミン遊離について、記録をすることも完了できており、その解析に着手する状態である。さらに、慢性疼痛に特徴的な脳活動異常の原因となる神経細胞の同定についても、神経障害性疼痛モデルラットの脳活動解析の結果、特定の脳領域において周期的脳活動が変化していることを明らかにすることができていることから、この領域への遺伝子導入を行い、GCaMPによる蛍光イメージングをCMOSデバイスを用いて行うことの準備が完了できたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度については、マウスを用いた大規模脳活動記録を安定して実施できるように実験環境を整備することから開始し、測定脳領域も6点から16点まで増加させる。また、可能であれば、32領域からの脳活動計測ができるような実験条件を構築する。この大規模脳活動記録の解析についても、海外共同研究者とともに、各脳領域の周期的脳活動の因果性や周期性などについて、機械学習用いて解析を進め、慢性疼痛に特異的な脳活動およびそのトリガーとなる脳活動を同定する。CMOSイメージングデバイスを用いた検討では、脳深部における蛍光イメージングを利用して、慢性疼痛の際に脳活動が変動していた側坐核ならびに下辺縁皮質の神経細胞の活動について蛍光イメージングを用いて検討を行う。特に、これまでの技術では困難であった、手術前から1週間後、2週間後および2か月後の神経細胞の活動について、同一個体から行い、神経障害による脳活動への長期にわたる疼痛刺激の影響についても解析を行う。また、各種神経細胞のプロモーターを用いた、神経細胞種特異的なGCaMP発現系を利用して、異常な脳活動の原因となる神経細胞の同定を行う。この際に、CMOSセンサーとともにGRINレンズを用いたMiniscopeによる脳活動計測を、自由行動をしている神経障害性疼痛モデル動物において実施する。なお、本研究のうち、CMOSセンサーによる慢性疼痛時での神経活動の変化については、アメリカの共同研究者であるAkay教授の研究室でも実施できるように、研究者(助教および学部生)を派遣する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍による移動制限のため、国際共同研究先に渡航することができなかったため、次年度に渡航できる人員を増やすため。
|