2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23000008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾辻 泰一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (40315172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末光 眞希 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (00134057)
佐野 栄一 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 教授 (10333650)
末光 哲也 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (90447186)
佐藤 昭 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70510410)
マキシム リズイー 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (50254082)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | グラフェン / テラヘルツ / レーザー / 電流注入 / プラズモン / ポラリトン / 誘導放出 / ボトムアップ |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンによる光学励起ならびに電流注入型のテラヘルツレーザー実現に向けて以下を実施した。 光学励起グラフェンレーザー : CVDエピタキシャル成長による高品質単層グラフェン(Si基板上に転写 ; 九大・吾郷准教授提供)をITOミラーで挟んだ縦型Fabri-Perot共振器型構造を改良試作し、ピコ秒高強度赤外線レーザーポンピングによるTHz帯放射スペクトルをフーリエ分光計で測定した。その結、室温下で、2~6THzにおいて増幅を伴う自然放出光の観測に成功した。しかし、誘導放出の観測には至っていない。THz帯誘導放出・レーザー発振の観測に向けて継続推進中である。 電流注入型グラフェンレーザー : Si/SiC/G(グラフェン)/Al_2O_3自然酸化膜のグラフェンヘテロ接合構造にデュアルゲートをスロットラインとして機能させる導波路構造に分布帰還型共振器構造を組み込んだレーザー共振器構造のデバイス試作を行った。トップゲート付のトランジスタ構造において, 極めて高いキャリア移動度110,000㎠/(Vs)を実現し、グラフェンレーザー実現に大きく近づいた[国際会議ISCS2015に採択・口頭発表予定]。 表面プラズモンポラリトン励起による巨大利得 : 前年度考案したグラフェン二重層キャパシタを核とし、その外側両面にゲートスタックを配したグラフェンヘテロ構造体を対象として理論解析を進め、印加バイアスで特定されたプラズモンモード周波数をフォトン発光によってアシストする共鳴トンネルのフォトンエネルギーと同調させることによて、表面プラズモンポラリトンの励起を伴う二重共鳴型のレーザー発振動作が従来のデュアルゲート方式に比して2桁以上の高い利得増強作用が得られることを理論的に発見した[JAP 115, 044511(2014).]。 グラフェンと化学的に最も安定でダメージのない材料として認知されているh-BNを原子4層分トンネルバリア層として導入したグラフェン二十層キャパシタを試作し、その電流電圧特性に予想される負性微分抵抗を低温下ながら観測に成功するとともに、我々が理論発見したフォトン発光でアシストする共鳴トンネル現象の観測に成功し、テラヘルツフォトンの自然放出光観測に初めて成功した。電流注入グラフェンレーザーの実現に大きく前進した[国際会議OTST 2015で発表、CLEO2015に採択・口頭発表予定]。 ボトムアップ型グラフェン成長技術 : Si(110)基板上3C-SiC(111)薄膜の配向成長条件を解明し、その特性を活用した高速回転エピ成長法を開発し、グラフェンの欠陥密度40%低減化に成功した[Mat. Sci. Forum, 740-742, 339(2013) ; ibid. 327(2013)]。G/3C-SiC/Si(GOS構造)のSiC/Si界面へのAlN層挿入とSiC表面平坦化により、G/D比を0.85から4.17へと劇的に増大させ、グラフェン高品質化に成功した[J. Phys. D, 47, 094016, 2014]。Si基板上の微細加工により局所的にGOS構造を形成し、面方位によるグラフェンの物性変調を同一基板上において初めて実現した[Scientific Reports, 4. (2014), 5173]。また、成長用基板表面の欠陥密度制御によるグラフェンの位置選択的成長法を新たに確立した。[J. Phys. D, 47, 094016, 2014]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学励起グラフェンによるレーザー実現に関しては、室温下での増幅自然放出光の観測に成功し、誘導放出成功が期待できる地点まで到達している。 電流注入型レーザーの実現では、トランジスタプロセス技術立ち上げに難航したが、昨年度成果の導波路構造実現の見通しとともに, 今年度は室温下でのテラヘルツ帯利得獲得を実現する上で最も重要かつ困難な課題であったグラフェン本来の秀逸なキャリア輸送特性(巨大キャリア移動度)をトランジスタレベルで実現することに成功し、ハードルは超えた。 さらに、電流注入レーザー発振の実現に必須となる, バンド間遷移に伴う反転分布に比して桁違いに高いキャリア注入効率の実現が可能な研究代表者らが理論発見したゲート制御グラフェン二十層のフォトン発光アシスト共鳴トンネル現象によるテラヘルツ自然放出現象の実験観測に成功するとともに, さらに桁違いに高い利得を実現し得るゲート制御グラフェン二十層による表面プラズモンポラリトン励起によるレーザー発振現象を理論発見していることから、提案・発見した物理現象の"デバイスへの実装"が可能なレベルにまで到達している。これは、H24年度の成果であるグラフェン・金属プラズモニックメタマテリアル構造による巨大利得増強作用とならんで、室温テラヘルツレーザー発振成功を可能にする重大なブレークスルーである。 高品質グラフェン成長技術では基板面方位による積層様式の完全制御、ならびに表面平坦化と領域限定による高品質化を実現できている。以上の点を総合的に勘案した。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題最終年度に当たる27年度は、新奇材料グラフェンによる新原理テラヘルツレーザー発振の実現を第一目標として研究を継続するとともに、これまでに明らかにしてきた理論・設計論を学理として体系化し、将来の産業化に向けた礎を構築する。具体的には、以下の課題を実施する。 (連携研究者 : 吹留博一助教・電気通信研究所、高桑雄二教授・多元物質科学研究所、吾郷浩樹准教授・九州大学先導物質化学研究所) 1. 光学励起グラフェンレーザー : グラフェン転写用に高抵抗Si基板を導入し、自由キャリア吸収を抑える、ITOミラーの反射率を向上させ、レーザー共振器のQ値を現状の60程度から1桁以上向上させるなどの改良によって、増幅自然放出から誘導放出・レーザー発振実現へと成功に導く。発振閾値特性の詳細評価のために、クライオスタットによる動作温度依存性評価を併せて実施する。 2. 電流注入型グラフェンレーザー : デュアルゲートDLC-グラフェンFETにSPP励起・伝搬が可能な導波路構造を導入設計する第一案と、回折格子ゲートによるグラフェン金属アレイ型メタマテリアル構造の第二案、さらに、ゲートスタック付グラフェン二重層キャパシタ構造(GS-GDL)とを継続して試作・評価し、レーザー発振実現に挑戦する。特に、GS-GDL構造の作製には、トンネルバリアとしてナノメートルオーダのh-BNをグラフェンと積層化する際の、上層グラフェン・下層グラフェン間の結晶方位整合、およびゲートスタックの積層化が鍵となる。グラフェンおよびh-BNは転写法で積層化し、その前後のゲートスタックには光電子制御CVDによるDLC成膜とPE-CVDによるSiCN成膜をアルタナティブとして挑戦する。 3. ボトムアップ型グラフェン成長技術 : 領域限定による高品質化と基板面方位による積層様式制御を実現した次の課題として、グラフェン高品質化の一層の推進が掲げられ、SiC/Si界面へのAlN層挿入とSiC表面平坦化技術の進化をさらに進め、ラマンピークG/D比を~5から~20への向上を目指す。 4. グラフェンテラヘルツレーザー理論の体系化と設計論の構築 : 本課題で対象とするグラフェンテラヘルツレーザーは、新しいグラフェンの光物性応用として、また、新しいレーザー理論の誕生という意味において、科学的側面から学術的意義は極めて高いと判断できる。同時に、レーザーを実現する上で、グラフェンの特異なバンド構造を活用する新しい電流注入型グラフェンレーザー素子構造の提案、設計論の体系化という工学的側面からの学術的意義も高く、学理の追及に基づく科学技術イノベーションとして極めて高い意義を有するものと判断できる。 5. テラヘルツ帯超高速通信、分光イメージング等のテラヘルツ応用システムへの導入・展開 : 本研究が成功すれば、半導体集積デバイスとして世界初の室温THzレーザー発振が可能となり、100Gbit/s級超高速THz無線通信の実現やその携帯端末化、THzカメラ、瞬時に超大容量メディアのダウンロード・アップロードが可能ないわゆるユビキタスTransfer-Jetサービスなど、将来の安心・安全・ユビキタスな情報通信社会に産業革命をもたらす大きな可能性を秘めている。これらの具体的な応用展開を図っていく。
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Research Products
(172 results)
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[Journal Article] Graphene-channel FETs for photonic frequency double-mixing conversion over the sub-THz band2015
Author(s)
T. Kawasaki, K. Sugawara, A. Dobroiu, T. Eto, Y. Kurita, K. Kojima, Y. Yabe, H. Sugiyama, T. Watanabe, T. Suemitsu, V. Ryzhii, K. Iwatsuki, Y. Fukada, J. Kani, J. Terada, N. Yoshimoto, K. Kawahara, H. Ago, and T. Otsuji
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Journal Title
Solid State Electron
Volume: 103
Pages: 216-221
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Room-temperature zero-bias plasmonic THz detection by asymmetric dual-grating-gate HEMT2015
Author(s)
T. Watanabe, T. Kawasaki, A. Satou, S.A. Boubanga Tombet, T. Suemitsu, G. Ducournau, D. Coquillat, W. Knap, H. Minamide, H. Ito, Y.M. Meziani, V.V. Popov, and T. Otsuji
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Journal Title
Proc. SPIE
Volume: 9362
Pages: 93620F-1-7
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Geometrical dependence of ultrahigh responsivity and its broadband characteristics of InP-based asymmetric dual-grating-gate high-electron-mobility transistors2015
Author(s)
A. Satou, T. Kawasaki, S. Hatakeyama, S. Boubanga Tombet, T. Suemitsu, G. Ducournau, D. Coquillat, D.V. Fateev, V.V. Popov, Y.M. Meziahi, and T. Otsuii
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Journal Title
OTST : Int. Conf. on Optical Terahertz Science and Technology Dig
Volume: 1
Pages: PS2-9
Peer Reviewed
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[Journal Article] 非対称二重格子ゲートHEMTによるテラヘルツ波検出の周波数特性2015
Author(s)
佐藤昭, Stephane Boubanga Tombet, 渡辺隆之, 川﨑鉄哉, 糟谷文月, 末光哲也, Denis V. Fateev, Vyacheslav V. Popov, 南出泰亜, 伊藤弘昌, Dominique Coquillat, Wojciech Knap, Guillaume Ducournau, Yahya Meziani, 尾辻泰一
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Journal Title
第62回応用物理学会春季学術講演会 予稿集
Volume: 1
Pages: 12p-A14-10
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[Journal Article] グラフェンチャネルFETのサブテラヘルツ帯ミキサ応用2015
Author(s)
菅原健太, 川﨑鉄哉, Binti Hussin Mastura, 玉虫元, 末光眞希, 吹留博一, 可児淳一, 寺田純, 桑野茂, 岩月勝美, 末光哲也, 尾辻泰一
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Journal Title
第62回応用物理学会春季学術講演会 予稿集
Volume: 1
Pages: 13a-A14-9
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[Journal Article] Gain enhancement effect of surface plasmon polaritons in optically pumped monolayer graphene2014
Author(s)
T. Kawasaki, T. Watanabe, T. Fukushima, Y. Yabe, S.A. Boubanga Tombet, A. Satou, A.A. Dubinov, V.Y. Aleshkin, V. Mitin, V. Ryzhii, and T. Otsuji
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Journal Title
OSA Technical Digest (online) (Optical Society of America, 2014)
Volume: 1
Pages: SF2F.4
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ultrahigh sensitive sub-terahertz plasmonic detector based on asymmetri ual-grating-gate HEMT2014
Author(s)
A. Satou, Y. Kurita, G. Ducournau, D. Coquillat, K. Kobayashi, S. Boubanga Tombet, Y.M. Meziani, V.V. Popov, W. Knap, T. Suemitsu, and T. Otsuji
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Journal Title
RJUS TeraTech-2014 : The 3rd Russia-Japan-USA Symp. on Fundamental & Applied Problems of Terahertz Devices & Technologies Proc
Volume: 1
Pages: 21-23
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ultrahigh sensitive sub-terahertz detection by InP-based asymmetric dual-grating-gate high-electron-mobility transistors and their broadband characteristics2014
Author(s)
Y. Kurita, G. Ducournau, D. Coquillat, A. Satou, K. Kobayashi, S.A. Boubanga-Tombet, Y.M. Meziani, V.V. Popov, W. Knap, T. Suemitsu, and T. Otsuji
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Journal Title
Appl. Phys. Lett
Volume: 104
Pages: 251114-1-4
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Graphene plasmonic heterostructures for new typse of terahertz lasers2014
Author(s)
T. Otsuji, V. Ryzhii, S. Boubanga Tombet, T. Watanabe, A. Satou, M. Ryzhii, A. Dubinov, V. Ya Aleshkin, V. Popov, V. Mitin, and M.S. Shur
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Journal Title
Proc. SPIE
Volume: 9199
Pages: 91990F-1-10
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Contribution of ideality factor, gate leakage current, and loading effect to terahertz detection by asymmetric dual-grating gate HEMTs2014
Author(s)
D. Coquillat, Y. Kurita, K. Kobayashi, N. Dyakonova, F. Teppe, C. Consejo, D. But, T. Otsuji, and W. Knap
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Journal Title
Condensed Matter in Paris
Volume: 1
Pages: TU-71
Peer Reviewed
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[Journal Article] Detection of terahertz and mid-infrared radiations by InP-based asymmetric dual-grating-gate HEMTs2014
Author(s)
D. Coquillat, P. Zagrajek, N. Dyakonova, K. Chrzanowski, J. Marczewski, Y. Kurita, A. Satou, K. Kobayashi, S. Boubanga Tombet, V.V. Popov, T. Suemitsu, T. Otsuji, W. Knap
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Journal Title
IRMMW-THz : Int. Conf. on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves Dig
Volume: 1
Pages: 1-2
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Microscopically-Tuned Band Structure of Epitaxial Graphene through Interface and Stacking Variations Using Si Substrate Microfabrication2014
Author(s)
Hirokazu Fukidome, Takayuki Ide, Yusuke Kawai, Toshihiro Shinohara, Naoka Nagamura, Koji Horiba, Masato Kotsugi, Takuo Ohkochi, Toyohiko Kinoshita, Hiroshi Kumighashira, Masaharu Oshima, Maki Suemitsu
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 4
Pages: 5173-1-6
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Observing hot carrier distribution in an n-type epitaxial graphene on a SiC substrate2014
Author(s)
T. Someya, F. Fukidome, Y. Ishida, R. Yoshida, T. Iimori, R. Yukawa, K. Akikubo, Sh. Yamamoto, S. Yamamoto, T. Yamamoto, T. Kanai, K. Funakubo, M. Suemitsu, J. Itatani, F. Komori, S. Shin, I. Matsuda
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Journal Title
Applied Physics Letters
Volume: 104
Pages: 161103-1-4
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] InGaAsチャネルHEMT及びグラフェンチャネルFETを用いたミリ波帯フォトミキシング2014
Author(s)
川崎鉄哉, 吉田智洋, 菅原健太, Adrian Dobroiu, 渡辺隆之, 杉山弘樹, 若生洋由希, 可児淳一, 寺田純, 桑野茂, 吾郷浩樹, 河原憲次, 岩月勝美, 末光哲也, 尾辻泰一
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Journal Title
信学技報
Volume: ED2014
Pages: 9-13
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[Journal Article] 非対称二重格子ゲート高電子移動度トランジスタを用いたプラズモニックテラヘルツ検出の広帯域特性2014
Author(s)
佐藤昭, ステファンボーバンガトムベット, 渡辺隆之, 川﨑鉄哉, デニスファティエフ, ヴャチェスラフポポフ, 南出泰亜, 伊藤弘昌, ドミニクコキラ, ヴォイチェッククナップ, ギロームドュコーナ, 尾辻泰一
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Journal Title
信学技報
Volume: ED-2014
Pages: 69-74
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