2011 Fiscal Year Annual Research Report
キネシンモーター分子群の機能と制御の統合生物学的研究
Project/Area Number |
23000013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣川 信隆 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任教授 (20010085)
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Keywords | KIFs / 細胞内物質輸送 / 微小管 |
Research Abstract |
1)NMDA型受容体NR2B subunitを含む小胞を樹状突起内で運ぶKIFI7のknockout mouseを作製解析したところ、KIF17の欠損により空間記憶などの海馬依存性記憶学習能力が低下し、海馬スライスで初期LTP、後期LTP、LTDが障害され神経樹状突起シナプス後部のNR2B subunit及びNR2A subunitの料が減少し、転写因子リン酸化CREBが減少し、NR2BのmRNAも減少していた。NR2Aの減少はNR2B減少が誘引し、プロテアゾーム系による分解による事が判明した。NR2Bの輸送は減少したが、NR2Aの輸送は変化がなかった。このことからKIF17はNR2Bを輸送するだけでなくCREBリン酸化を介したKIF17,NR2B mRNAの転写を通して記憶学習を主要に制御していることが判明し(Yin et al.Neuron 2011)、KIF17 tai1の1029セリンのリン酸化によりKIF17とcargoの結合が制御され、高次脳機能がコントロールされる事も判明した(Yin et al. J Neurosci 2012)。これは分子モーターがグルタミン酸受容体を単に輸送するだけでなく転写因子を介して分子モーター自身及びグルタミン酸受容体のmRNAレベルでの合成を制御する事を示し、高次脳機能の大変重要な制御を行っている事を示した重要な成果であり、毎日(2011年4月28日)、朝日各新聞(2011年5月12日)にとりあげられた。 2)刺激の多い環境下で生育したマウスでは、シナプス小胞前駆体を輸送するKIF1Aが著名に増加し、シナプス小胞蛋白の輸送が亢進し、海馬のシナプスの密度が増加し、記憶学習能力の著名な向上がみられ、環境保存性の高次脳機能能を制御してKIF1Aが大変重要である事が示された(Kondo et al.Neuron 2012)。この発見は外部環境が脳の発達、脳の高次機能に分子モーターを介して大きな影響を持っている事を示した大変重要な成果で朝日、毎日各新聞(ともに2012年2月23日)に紹介された。 3)神経成長端で微小管の脱重合を行い軸索側枝の伸長を制御しているKIF2Aの活性がPIP kinase αにより制御されている事を示した(Noda et al.PNAS 2012)。これは脳の回路網形成にとり大変重要な発見である。 4)軸索vs樹状突起の方向性輸送の機構としてKIF5モーター領域が軸索起始部に多いGTPチュブリンに富んだ微小管に親和性が高く結合する事が重要である事を明らかにした(Nakata et al.JCB 2012)。これは方向性輸送の機構に初めて物質的根拠を示すもので大変重要な発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の目的にあげた具体的課題のほとんどについて同時進行的に優れた結果が出ており、特に記憶学習等の脳の高次機能をKIF17,KIF17Aが大変重要に制御している事を解明できたのは特筆すべきである(Yin et al.Neuron 2011;Yinet al.J Neurosci 2012;Kondo et al.Neuron 2012)。さらにKIF2AのPIPkαによる新しい制御機構(Noda et al.PNAS 2012)及び方向性輸送のKeyとなる研究成果をあげた(Nakata et al.JCB 2011)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も予定通り推進して行く方針である。
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Research Products
(34 results)