2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23222003
|
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
關 雄二 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (50163093)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
坂井 正人 山形大学, 人文学部, 教授 (50292397)
鵜澤 和宏 東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)
井口 欣也 埼玉大学, 教養学部, 教授 (90283027)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 考古学 / 文化人類学 / 文明 / 複合社会 / 権力 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンデス文明における権力の変容をさぐるため、文明初期にあたる形成期(前3000年~紀元前後)の祭祀遺跡パコパンパ(ペルー北高地)を約3ヶ月にわたって調査し、遺構、出土遺物の分析を行い基礎資料の収集に努めた。とくに半地下式パティオにおいて、大量の土器が何度かにわたって放棄された跡が確認され、デンプン粒分析の結果、トウモロコシ、ジャガイモ、マニオクが検出された。考古学的に検出されることが希な儀礼的饗宴の痕跡と思われ、土器の器形分析と併せて発表を準備している。さらに人骨の分析から、暴力を示す骨折や陥没痕なども発見され、戦争の証拠がないところから、儀礼の痕跡と同定した。昨年度の懸案であったラクダ科動物の利用については、ストロンチウム同位体比、酸素同位体比を測定し、遺跡周辺での飼育と共に、他地域からの移動を示す証拠が発見され、祭祀空間における肉や骨の消費ばかりでなく、駄獣としての役割が示唆された。 一般調査については範囲をさらに広げ、パコパンパ遺跡から山間部(北)、熱帯低地(東)、そして海岸部(西)へと通じる地域間交流ルートを把握し、学会で公表し論文を出版した。また考古学資料をGISデータベースで統合する作業完成させ、新たに土器の3次元画像データベースの作成を開始した。さらに、同じペルー北高地に位置するクントゥル・ワシ遺跡、ヘケテペケ谷中流域、中央海岸北部のネペーニャ谷下流域でも調査と遺物分析を展開し、文明初期の多様な社会状況の把握に努めた。これらの成果は、学術誌で公表するとともに、2014年8月にペルーで、2014年11月と2015年2月に日本で開催した国際シンポジウムで発表し高い評価を得た。また2015年1月に東京でエジプト文明との比較を主題とする公開フォーラムを実施したほか、昨年開催した西アジア文明との比較シンポジウムの成果を出版する作業を行った。2015年刊行の予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書、交付申請書に記した予定のうち、資金の多くを使用した海外調査は極めて順調に実施することができ、最終年度に向かって研究を収束させる見通しが得られた。また昨年に引き続き、権力生成という研究テーマとまさに合致するような石彫がさらに一体発見された。人間と動物を合体させた図像が石という恒久的な材質に刻み込まれた点は、動物の霊力を操る権力者の出現と、その権威の永続性への希求を読み取ることができる。また、出土遺物の整理も着々と進み、膨大なデータの統合から、神殿における人間の活動や社会の様相に迫る考察が次々に生まれ、研究の進捗が見られた。とくに日本人類学会において、研究全体を見通すシンポジウムを開催できた点は有益であった。また、同じアンデス文明でも、他の地域や他の時代との比較をテーマにしたシンポジウムやワークショップの開催は予定以上実施することができ、米国の研究者から継続的な集会を望む声がでるほど充実した成果がえられた。他地域の文明との比較においても、シンポジウムに参加したエジプト文明研究者からは、自分たちにない視点を持つ本プロジェクトに関心を寄せる発言が相次ぎ、また昨年度、西アジア文明と比較したシンポジウムの成果は一般書として今夏、出版されることが決まっている。このようにすべての活動において十分な成果が得られたことは間違いない。
|
Strategy for Future Research Activity |
ペルー北部での集中発掘と遺物分析、文理融合的な研究を進めながら、昨年度までに組織したワークショップやシンポジウムの成果を出版していく。すでにイェール大学出版局から今夏、1冊出版されることは確実である。またこれまでの成果は、国立民族学博物館の欧文雑誌Senri Ethnological Studiesの1巻としても出版する予定である。さらにパコパンパ遺跡発掘報告書(欧文・邦文)の作成も進めていく。さらに、2015年7月中旬には、研究の総括として、イェール大学との共催で、文明形成における公共建造物の意味を探るシンポジウムを国際アメリカニスト会議(エル・サルバドル)の場で開催し、2016年1月には、日本において、本研究プロジェクトに関わった研究者全員による公開シンポジウムを2日間にわたって開催する予定である。
|
Research Products
(39 results)