2013 Fiscal Year Annual Research Report
法と経済学的手法による国際知的財産担保法研究―方法論の充実と普及を目的として
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23223001
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河野 俊行 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80186626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 立 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00323626)
清水 剛 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00334300)
加賀見 一彰 東洋大学, 経済学部, 教授 (50316684)
寺本 振透 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60436508)
原 恵美 学習院大学, 法務研究科, 准教授 (60452801)
松下 淳一 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70190452)
JURCYS PAULIUS 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 講師 (90621110)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 国際私法 / 統一法 / 知財 / 準拠法 / 経済分析 |
Research Abstract |
① 統一法と国際私法の経済分析:費用と便益の両方に目配りした分析の結果、適合性の高い法が低コストで選択され、第二に、選択された準拠法のもたらす便益が高い場合には国際私法が優位に立つ。逆にこれらの条件が否定される状況下にあっては、統一法が望ましい可能性が高まる。加えてネットワーク外部性の観点からも、統一法の優位性を一般化することはできない。その上、統一法の中でも、統一性が緩やかで選択可能性を内包した統一法のほうがより多くの締約国を得ていることを明らかにして、統一法の国際私法に対する一般的優位性は命題として成立しないことを証明した。 ② 統一国際私法の分析:外国法を適用する便益が同じ場合と異なる場合いずれにおいても法廷地法を適用するインセンティブが強いこと、これが他国との関係を考慮しても支配された戦略であることを明らかにした。次に、自国法及び外国法の適用によって自国の厚生と世界厚生が変わる場合分けを行い、自国厚生が下がっても世界厚生が上がる場合の分析が国際私法統一へ導くためのカギであることを明らかにした。その上で、国際私法統一への必要条件として、他国との相互性、長期性、多角性を指摘した。 ③ 知財と国際私法:知財の統一法を、基本原則の対立を緩和するためのものと、方向性は同じだが差異のあるものに大別し費用便益計算した。その結果、前者は統一したほうが世界厚生の観点からは好ましいが、後者については各国の便益が高い場合統一しないことに十分な理由があることが明らかとなった。第二に、知財に特化した規定を置く国際私法立法例はまれであり、国内法レベルでも統一法レベルでも、国際私法ルールが制定法として存在しない。かかるギャップを埋めることの正当性、知財に関する原則的国際私法ルールとして主流となっている保護国法主義の正当性、そしてこれをソフトローとして策定することの正当性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本報告書の執筆時点は、本研究の成果の公表準備途上の時期に当たったため、公表済み成果を多数提出するまでに至っていないが、その重要な一部は提出できている。平成26年度中には、国際私法の経済分析に関するPocketbook(ハーグ国際法アカデミーの単行本)及び民商法雑誌の特集号は公刊され、同年9月の国際シンポジウムとその成果公表、オンラインサーベイを用いた2回目の実務調査とそのとりまとめを含め、予定通りのスケジュールで研究成果をとりまとめることができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
①平成26年9月国際シンポジウム:当初の研究計画では、平成26年8月に京都で開催予定の第76回ILA研究大会で成果を発表した後、平成27年度に国際シンポジウムを開催して総まとめを行う予定であった。しかし東北大震災を受けてILA日本支部は平成26年度の京都大会開催を返上し、代替研究大会は平成26年4月にワシントンDCで開催されることとなったため、当初の発表計画に狂いが生じた。そこで、国際シンポジウムを前倒して平成26年9月に開催して成果発表を行うこととしている。最終年度の総まとめは、後述するWIPO(世界知的所有権機関)との共同シンポジウムを活用する。このシンポジウムは、これまでの研究成果を受け、知財担保を知財に着目したファイナンスという枠組みにおいたうえで法の機能を問い、この文脈でグローバルな場面において重要になる国際私法のあり方を問うという問題意識に出るものである。カンファレンスタイトルは、The Law and Economics of High Tech Ecosystems: Intellectual Property and Venture Capital、平成26年9月4-5日に東京大学福武ホールで開催予定である。 ②オンラインサーベイ:本研究で行った第一サーベイ及びその後の成果を踏まえて、第二サーベイを行う。上記の国際シンポジウムの成果も踏まえて平成26年度中に準備する。今回は英文質問票も作成して調査対象を国内外に広げる。費用面からオンラインサーベイを活用する。 ③WIPOシンポジウムにおけるパネル:WIPOが平成27年後半に企画する知財カンファレンス(主催国未定)に知財と国際私法に関するパネルを設けることが決まり、河野がテーマ及び6名のスピーカーの選定を任されている。このパネルに前述した国際シンポジウムの成果も含めた本研究の成果を反映させる。
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Research Products
(21 results)