2014 Fiscal Year Annual Research Report
核構造におけるテンソル力の効果と隠された相互作用の研究
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23224008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷畑 勇夫 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (10089873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土岐 博 大阪大学, 核物理研究センター, 名誉教授 (70163962)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テンソル力 / 不安定核の構造 / 不安定核の反応 / 核内核子の高運動量成分 / 不安定核の陽子半径 |
Outline of Annual Research Achievements |
Beの荷電半径の結果を (PTEP)誌のレター論文として発表した。さらに高エネルギーでのCアイソトープのデータ解析が終了し、論文を書き始めている。また低エネルギーでのデータ収集も終わり、解析もほぼ終了している。高低両エネルギーデータを比べることにより新しい議論が出来る。 テンソル力の物理については昨年の論文発表のあと、反応機構の不定性をなくすために核物理研究センター及びドイツGSI研究所で400ー1200 MeVで散乱角0度での実験を行った。核物理研究センターでのデータの解析はほぼ完成し論文を書いている。 核物理研究センターでの不安定核ビームラインでの二種の実験装置(アクティブ標的、及び大立体核シリコン検出器が完成し実験を行った。 テンソル最適化シェルモデル(TOSM)による計算をすすめ、テンソル力の効果が重要な役割をもって励起スペクトルを形成していることを発見した。さらにはシェル構造とアルファ構造がこれらの原子核では共存していることも顕著になった。これらの成果を論文としてPTEPに投稿した。さらには、TOSMが満たすべき条件も見つけることが出来た。これらの研究から全く新しい理論の着想とその定式化が進んだ。クラスターとシェル構造を最初から仮定しないで変分で得ることが出来る分子軌道動力学(AMD)にテンソル最適化(TO)の概念を取り込んだTOAMDの定式化が進み、論文もPTEPに投稿した。 軽い原子核の励起状態には様々な性質が現れる。THSR波動関数は励起状態の中でも全く新しい核構造であるクラスターガス状態に焦点を当てて導入されたもので、パウリ原理と長距離核力を正確に考慮する微視的立場からの模型波動関数である。この波動関数はここ数年の研究によりクラスターガス状態に留まらず、一般のクラスター状態をも見事に記述することが明らかにされ、従来のクラスター模型を凌駕するものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験装置はほぼ完成し、そのほとんどは実験に使用したかテストに成功して本番の実験を待っている状態である。その上で、テンソル力のさらなる理解のために次世代の実験が明らかになりつつ有り、そのための検出器などの製作やテストを進めるようになってきた。これらの検出器は当初は思いついていなかったものであるが、将来的に新しい方向を広げるものと期待される。 論文で発表したようにテンソル力による高運動量成分であると理解できる現象が明らかとなった。これをさらに確立するための実験を進めている。特に反応の任意性が無いような条件での実験もデータ収集を終了した。さらに研究を進めていくにつれて、テンソル力による核子相関を直接観測する方法があることがわかり、当初考えていなかったような方向へ発展している。 テンソル最適化シェルモデルでの計算結果は素晴らしいもので、これまではほとんどの理論では再現できなかった軽い原子核の高い励起状態を、ものも見事にテンソル力の役割により再現することがわかった。これらの計算結果と軽い原子核でのアルファークラスター構造の両立の模索から、今年度は全く新しい理論の構築に取りかかることが出来た。TOAMD理論と名付けた理論形式はAMDにTOSMの概念を導入する全く新しい方法であり、テンソル力が重要な役割をはたす原子核多体系を系統的に計算できる方法である。この系統性はテンソル相関を順次取り込み近似の精度を系統的に高めて行くことによる。今年度の研究課題の理論面での達成度は高く、そればかりか多体系の基礎理論とも言えるTOAMDの定式化を行うことが出来た。理論面では当初の計画以上の成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、核子移行反応、荷電変化反応、酸素以外の核(例えば40Ca)での(p,d)反応の測定をつづける。それに加えて新しい課題となってきた(p,pd),(p,nd)反応、(d,3He),(d,t)反応なども開発していく。重イオン反応では荷電交換反応の中性子過剰核での振る舞いを調べる予定である。 次年度の理論面での発展はおそらくは爆発的なものになると思っている。TOAMDは原子核多体理論の核となるものであり、これまでのアルゴンヌグループのA=12体系までの計算を再現できるばかりではなく、それぞれの原子核において何が重要な役割をはたしているかを明らかにすることが可能である。さらには系統的な計算方法であることで、最も重要な相関を取り込みながら計算を進めることが可能であることで、かなり重い原子核までもが研究対象になってくる。その意味で、次年度は共同研究を一気に広げる予定である。国際的にはまず最初に、中国の南京大学、韓国のインチョン大学との共同研究を始める。
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Research Products
(18 results)