2011 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンナノ構造を基盤としたドーパント原子デバイスの開発
Project/Area Number |
23226009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
田部 道晴 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80262799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 行徳 NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 主幹研究員 (80374073)
品田 賢宏 早稲田大学, 高等研究所, 准教授 (30329099)
水田 博 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90372458)
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Keywords | 電子デバイス・機器 / シングルドーパント / シリコン |
Research Abstract |
本研究計画は、シリコンテクノロジーを支えてきたドーパントの概念を一新し、個々のドーパント原子を利用したトンネル型原子デバイスの開発を目的とするものである。H23年度の主要な成果は以下のとおりである。 1.ドーパント原子トランジスタ Si中のリン(P)ドナー原子を介して電子は電極間をトンネル移動する。H23年度はチャネルサイズと形状がId-Vg特性に与える影響を調べ、微小チャネルほど、またナノワイヤ型よりもディスク型チャネルの方が単一ドナー原子特性を得やすいこと、そしてそのイオン化エネルギーはバルクSi中のドナーより数倍大きくなることを見出した。この結果は、高温動作に結び付く重要な知見であり、今後さらに本格的に調べていく。 2.第一原理計算 2端子型Siナノワイヤにリン原子を少数個導入した場合の状態密度(DOS)を詳しく調べ、Siの伝導帯下端から測ったドナーレベルは、多少のドーピング場所依存性はあるものの、ほとんどの場合500meV以上と大きな値が得られ、ディープレベル化することがわかった。今後の高温動作に対する指針となる。 3.ドーパント検出技術 KFMを用いて、Pドナーポテンシャルとその電子注入効果を低温と室温で比較観察した。その結果、低温では電子が1個ずつ各Pドナーにトラップされるが、室温では電子の波動関数が広がり、複数のドナーポテンシャルが一様にかつ徐々にスクリーニングされていくことを見出した。今後、デバイス特性との対応をさらにくわしく調べていく。 4.フォトン検出デバイス Pドナーが複数個存在するSiチャネル中で、可視光域のフォトンが吸収されると光誘起電子がひとつのドナーにトラップされ、それに伴いIdがランダムテレグラフ信号として時間変動すること、また、特性からそのトラップドナーの配置が予測できることを見出した。 5.その他シングルイオンドーピング精度向上、ドーパントのESR測定などで予備的データを蓄積した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドーパント導入の高精度化に向けた実験ではやや遅れがあるが、一方で、ドーパント原子トランジスタにおけるディープ化したドナーの観測、KFMによるドナー原子への電子注入効果の温度比較など、予想を超えて進展した内容も多く、全体として見れば、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験と理論の両面で確認できた「ドナーレベルのディープ化」は本研究計画の要とも言える発見であり、これを中心にして、高温動作に向けた新しいデバイス作りと測定に取り組む。ドーパント導入については、EB描画マスクを用いて局所的に20-50nm程度の直径の穴をあけて熱拡散、という現実的な方法によって制御可能性を探る。
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