2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23229004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清野 宏 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10271032)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 粘膜免疫 / 膣粘膜感染症 / 膣粘膜指向性関連分子 / エフェクターT細胞 / ケモカイン |
Research Abstract |
本年度は、HSV2-CD4 T細胞の膣粘膜指向性決定分子を同定する方法の確立を試みた。解析を容易にするツールとして、HSV-2抗原特異的TCR Tgマウスの作製を進めていたところ、メルボルン大学よりHSV-1のglycoprotein D (gD) 特異的TCR Tgマウス(HSV-1 gDT-IIマウス[Gebhardt T. et al., Nature 477:216, 2013.])を使用させて頂く機会を得たので、このマウス用いて予備研究を遂行した。まず、HSV-1 gDT-IIマウスがHSV-2-gDペプチドに応答性があるかどうか検討したところ、HSV-2-gDペプチド特異的IFNg産生応答が認められた。この応答はHSV-1-gDペプチドで刺激したものと同程度であったことから、HSV-1 gDT-IIマウスは弱毒化HSV-2を用いた実験にも使用可能である事が明らかになった。加えて、HSV-1 gDT-IIマウスのgDを認識するT細胞のTCR鎖は、マイナーなVa3.2で構成されているため、抗原特異的TCRを認識するMHCクラスIIテトラマーがなくても、抗Va3.2抗体である程度の判別が可能であった。 予想通り、脾臓HSV-2特異的IFNg産生細胞(全身性メモリーT細胞)数は、HSV-1 gDT-IIマウスを用いることにより、野生型マウスより多く得られた。また、膣粘膜に誘導された組織型メモリーT細胞中の、gDを認識するものの割合は野生型マウスと比較した場合有意に大きくなっていた。しかしながら、予想に反して、膣粘膜組織型メモリーT細胞の数は野生型マウスを用いた場合とほぼ同数であり、増加は認められなかった。このことから、全身において誘導されるメモリーT細胞数の増加に関わらず、膣粘膜において形成され、存在しうるメモリーT細胞数は一定に保たれていることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メルボルン大学より貸与されたHSV-1 gDT-IIマウスがHSV-2を用いた解析にも十分に応用可能であったことから、当初作製予定であったHSV-2抗原特異的TCR Tgマウスの完成を待たずに解析を進めることが出来た。また、HSV-1 gDT-IIマウスのgDを認識するT細胞のTCR鎖は、マイナーなVa3.2で構成されているため、抗原特異的TCRを認識するMHCクラスIIテトラマーがなくても、抗Va3.2抗体である程度の判別が可能であった。このアドバンテージは、MHCクラスIIテトラマーの作製と平行しつつ、精度が若干劣るものの、gDT-II T細胞を検出出来ることを意味しており、この点からも当初の予定よりも早く解析を進めることが可能となった。HSV-1 gDT-IIマウスを使用することで、経鼻免疫により誘導される膣粘膜組織型メモリーT細胞の数が大きくなり、解析を容易にすると考えていたが、予想に反して、局所におけるメモリーT細胞数に変化は認められなかった。したがって、膣粘膜組織型メモリーT細胞を大量調整し、DNAマイクロアレイ解析に供することは難しくなったが、解析法を微量のRNAサンプルで行うことの出来る次世代シークエンサーを用いたRNAシークエンス法に変更することで回避出来ると考えており、その検討をすでに開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAマイクロアレイ解析に変わり、微量のRNAサンプルで発現解析が可能なRNAシークエンス法を用いて、HSV2-CD4 T細胞が発現する膣粘膜指向性関連分子の同定を行う。また、より高精度にHSV2-CD4 T細胞を分収するために、HSV-1 gDT-IIマウスが認識するHSV-2 gDのペプチド配列に基づいてMHCクラスIIテトラマーの作製も進める。経鼻免疫したマウスの膣粘膜組織において、組織型メモリー細胞群の誘導、存在に関与する分子機構について、メモリーT細胞の解析のみならず、リンパ球以外の膣粘膜組織細胞の側面から、Tandem Mass Tag法を用いたLC-MS/MSによる網羅的タンパク質同定・比較定量を行う予定である。 平成26年度以降の2年間で、上記の方法により、経鼻免疫によって誘導される抗原特異的免疫担当細胞の膣粘膜組織指向性を決定する分子機構を明らかにし、注射型免疫方法では形成が困難な膣粘膜組織型メモリーT細胞形成機構について明らかにしていく。また、その機構の普遍性を確認するために、モデル抗原としてOVAを用いた実験系およびin vitro実験系をHSV-2と同様に組み、解析を進めていく予定である。また、アジュバントの代わりにナノゲルを用いた場合の膣粘膜組織指向性についても同様の解析を進め、アジュバント併用型の結果と比較検討を行い、アジュバントフリーなHSVに対する新世代粘膜ワクチン開発に繋げていきたいと考えている。
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Research Products
(32 results)