2012 Fiscal Year Annual Research Report
湯川・朝永・坂田記念史料から分析する日本の素粒子物理学者の系譜
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23240111
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
高岩 義信 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (10206708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
九後 太一 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (00115833)
棚橋 誠治 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 教授 (00270398)
金谷 和至 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (80214443)
五島 敏芳 京都大学, 総合博物館, 講師 (90332139)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 科学史 / 史料データベース / 素粒子物理学 |
Research Abstract |
1.湯川記念館史料室では、概略を示すにとどまっていた史料記述データベースの記述をより詳細なものとし不適切な記述に修正を施すなど、公開運用にむけて支障の無いように点検をすすめた。資料の追加があったためその記述をデータベースに加えた。また、高性能のスキャナーを設置し資料のデジタル化が円滑に進められる体制が整えられた。 2.朝永記念室においては、既存の史料記述データベースからデジタル化されたコンテンツにリンクをとるシステムの整備がすすめられた。また朝永記念室史料紹介のウェブページの一部のバイリンガル化(英語化)を行った。 3.坂田記念史料室では坂田昌一の主宰した研究室(E研)の歴史についての研究会を開催し、坂田とE研に在籍した研究者の動向、さらには名古屋大学・物理学教室憲章の制定の動きが他の大学の物理学教室運営にも影響を与えたことなどが示された。この検討は次年度にも継続される。 4.オープン・ソフトウェアArchonを導入したアーカイブズ史料カタログのデータベース・サーバを基礎物理学研究所に設置し、試験的な公開を実施しているが、そのサーバに三つの史料室のデータをインポートする作業を継続してデータは順調に蓄積されている。Archonは欧米語をベースに多言語をサポートするように開発されたものであるが、その日本語化には日本語用の環境、用語データの追加等の作業が必要であるので、その作業もひきつづき行われている。 5.史料の典拠レコード(コンテクスト・データ)である組織名・人名・家系(CPF)データベースの構築がテスト・プラットフォームで実施されている。これを活用することにより湯川・朝永・坂田記念史料から科学史的課題として素粒子研究者の系譜の分析を行うときの有用性がこれから検討される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該科研費の課題は、記念史料室の史料を利用しつつ素粒子論研究者の系譜を解明することを目標としている。しかし、 (1)史料記述のデータベースの保守(追加と修正)とその公開に関するシステムの運用は常に改善が求められるので、終わることがなくその作業を継続的に行う必要がある。また、 (2)そのデータベースにコンテクスト・データ(CPFレコード)を構築することはまだあまり試みられていない作業であるため、その設定と使用方法と利用価値の可能性の検討に時間がかかる。 (3)各記念史料室を代表する分担研究者は主として物理学者であり、科学史的分析の手法に関しては熟達していない。 以上のような理由から、史料を利用しての設定した目標の分析は初めに想定したほど容易には開始されなかった。次年度の活動で、目標の設定とそこに至るまでの手法の再検討・再確認をしながら課題の検討をこれから進めていく。 当該科研費事業は、複数の研究分野に属する研究者からなる共同研究の体制をとっている。そのメリットの恩恵を受けていることは間違いないが、その共同作業の役割分担を相互に理解することの促進をさらに進めることによって効率の向上が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の「実績概要」と「達成度」の説明で述べたように、当該科研費の主たる目標の分析の開始が必ずしも順調ではなかった。それに対して以下のような点に留意して今後の活動を進めていかなければならないと考えている。 (1)素粒子論研究者の系譜の検討を進める。それには、名古屋大学に加えて他の大学の原子核・素粒子論関連の研究室の動向とその出身者の活動を、利用できる史料を(インタビュー、オーラルヒストリーも含めて)参照することにによって整理する。 (2)素粒子論研究者の系譜の検討に便利なようなコンテクスト・データのデータベースの構築をさらに検討する。 (3)各拠点の研究者および様々な専門分野の共同研究者のあいだの協力がポジティブなものとなるように、それぞれの研究テーマをコヒーレントなものとすることに努める。 (4)当該科研費の期間は次年度で終了するが、史料室は半永続的に運用が続けられることを念頭に、史料の利用による科学史的研究実践のモデルケースを提示する。それによって研究を支援するために必要なデータベース整備を含む史料室の管理運営の方針と仕組みについての提言をできるようにする。 (5)その成果と提言を盛り込んだ報告書の作成をする。
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Research Products
(9 results)