2013 Fiscal Year Annual Research Report
放射線および化学物質の直接人体影響とそのメカニズム
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23241023
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Research Institution | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
Principal Investigator |
野村 大成 独立行政法人医薬基盤研究所, 難病・疾患資源研究部, プロジェクトリーダー (90089871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梁 治子 独立行政法人医薬基盤研究所, 難病・疾患資源研究部, サブプロジェクトリーダー (90301267)
藤堂 剛 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90163948)
藤川 和男 近畿大学, 理工学部, 教授 (90247958)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線、粒子線、X線 / 化学物質 / ヒト臓器・組織 / Super-SCID / 環境有害物質 / 人体影響 / メカニズム / 感受性 |
Research Abstract |
放射線、環境有害物質(ダイオキシン、ウレタン)によるヒト組織への直接影響(形態変化、機能変化、遺伝子発現異常、突然変異)を、ヒト正常組織等長期維持システム(Super-SCID マウス)を用いて検出し、ヒト組織における損傷応答のメカニズムを解明する。 25年度は、ヒト肺組織(正常肺、肺がん)に加え、ヒト前立腺がん(世界初の移植成功例)をLPS無反応のC3H/HeJ-scidマウスに移植し、炭素線、ヘリウム線、中性子線、X線の直接影響を調査した。放射線医学総合研究所重粒子線がん治療装置(HIMAC)生物照射室において炭素線およびヘリウム線照射を行った。肺がんにおいては、RBEは炭素線で約5、ヘリウム線で2以下であった。前立腺がんにおいては3 Gyまでは炭素線、ヘリウム線、X線に差はなく、炭素線大量照射(5 Gy)で肺がんと同じレベルの抑制効果がみられた。炭素線のRBEは約2である。放射線により壊死に陥った前立腺がん組織が長期間残存するため、見かけ上抑制効果が見られなかったと考え、前立腺がん細胞より分泌されるPSAを測定したところ、3Gy~5Gyでも強い抑制効果が見られた。ヒト正常肺組織への炭素線の影響も、マイクロアレイ検索で遺伝子発現の変化が線量に比例して増加し、免疫、損傷、ストレス対応、アポトーシス、複製関連遺伝子が関与していた。逆に、SCIDマウス照射部位の皮膚の脱毛、白髪化は、X線の方が炭素線より強い。放射線による損傷応答にはPI3関連キナーゼファミリー及びp53が重要な役割を果たしている。放射線・化学変異原により誘発される遺伝子変異の鋭敏な検出系を確立するとともに、その検出系を用い変異導入と発がんの相関を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Super-SCIDマウスの生産、ヒト正常組織継代維持マウスの作成とこれを用いた放射線、化学物質(ダイオキシン、ウレタン)の作用解析は当初計画どおり進展した。当初より運用予定が少し遅れる可能性が危惧されていたヒト組織への粒子線照射実験は、放射線医学総合研究所重粒子線がん治療装置(HIMAC)生物照射室にて炭素線、ヘリウム線を用い大々的に実施できた。ヒト肺がん組織、前立腺がんへの炭素線、ヘリウム線の直接効果もヒト肺がんおよび前立腺がん組織移植SCIDマウスを用い調べ、炭素線治療の有効性を証明できた。しかし、陽子線照射は放射線医学総合研究所ではエネルギー不足、不安定性のため実施することは好ましくないことがわかった。 ヒトへの遺伝的影響のメカニズム解析を行う為に、小型魚を用い放射線損傷応答に関与する遺伝子の変異体作製を行い、基本的制御因子の変異体を作成する事に成功し、マイクロサテライトを用いた放射線誘発遺伝子変異検出系を確立し、p53 遺伝子変異により検出変異頻度が大きく増加する事を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
炭素線照射実験に加えヘリウム線照射実験も、放射線医学総合研究所HIMACにて実施でき、大きな成果が得られた。陽子線についてもHIMAC生物照射室で実施できるよう当初より交渉・検討してきたが、照射エネルギー不足、不安定性のため、照射実験には好ましくないとの結論に至った。全国の粒子線治療専門家と相談し、26年度より若狭湾エネルギー研究センターで陽子線照射が可能であることがわかった。面談の上、26年度に大々的に照射実験を開始することに決定した。中性子線照射は、従来通り近畿大学研究用原子炉にて実施しているが、26年度は保守点検のためしばらく使用できない。放射線、化学物質によりヒト組織に直接誘発される遺伝子発現の変化を把握するとともに、小型魚で見いだした遺伝的不安定性のメカニズム研究を続け、ヒトの放射線感受性へ強い影響を与える遺伝的バックグラウンドを明らかにしたい。26年度は、p53 遺伝子変異の作用が、アポトーシス誘導によるのか、組み換え修復等修復系制御の以上によるのかを明らかにする。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] p53-Dependent Suppression of Genome Instability in Germ Cells.2014
Author(s)
Otozai S, Ishikawa-Fujiwara T, Oda, S, Kamei Y, Ryo H, Sato A, Nomura T, Mitani H, Tsujimura T, Inohara H, and Todo T.
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Journal Title
Mutat Res
Volume: 760
Pages: 24-32
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Human papillomavirus and p53 mutations in head and neck squamous cell carcinoma among Japanese population.2014
Author(s)
Maruyama H, Yasui T, Ishikawa-Fujiwara T, Morii E, Yamamoto Y, Yoshii T, Takenaka Y, Nakahara S, Todo T, Hongyo T, Inohara H.
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Journal Title
Cancer Sci.
Volume: 105(4)
Pages: 409-417
DOI
Peer Reviewed
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