2013 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・グローバル時代から見たソ連崩壊の文化史的意味に関する超域横断的研究
Project/Area Number |
23242018
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
亀山 郁夫 名古屋外国語大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00122359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 清治 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (30126106)
貝澤 哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247267)
沼野 充義 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (40180690)
鈴木 義一 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (40262125)
岩本 和久 稚内北星学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40289715)
鴻野 わか菜 千葉大学, 文学部, 准教授 (50359593)
沼野 恭子 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (60536142)
岡田 和行 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (70143617)
前田 和泉 東京外国語大学, その他部局等, 准教授 (70556216)
諫早 勇一 同志社大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80011378)
渡辺 雅司 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90133214)
望月 哲男 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (90166330)
古賀 義顕 東海大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10397010)
塩川 伸明 東京大学, その他部局等, 名誉教授 (70126077)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ロシア文学 / ロシア文化 / 表象文化 / ソ連 / 全体主義 / 冷戦 / ペレストロイカ / 比較文学 |
Research Abstract |
研究期間第3年目にあたる平成25年度は、言語文化、表象文化、政治文化、歴史文化の4部門において、研究分担者、連携研究者が個別の研究成果を、一般書、学術書、定期刊行物、学会発表などの形で公表した。本課題に関連する全体的成果としては、平成25年8月17日の全体研究集会(学士会館)、そして特に、平成26年3月8日にグローバルシンポジウム「ロシア文化の悲劇―国家崩壊期の芸術」(名古屋ガーデンパレス)が挙げられる。前者においては、20世紀ロシアの代表的V・グロスマンの長編小説『人生と運命』をめぐり、長尾広視の書評原稿に基づく塩川伸明と赤尾光春のコメントを軸とし、総計4時間にわたる集中討議を行った。個別報告では、鈴木義一が「ロシアの反政府運動と《中間層》をめぐる意識動向」と題する報告を行った。次に、平成26年3月8日のグローバルシンポジウム「ロシア文化の悲劇――国家崩壊期の芸術」では、E・ジョーガチ(モスクワ写真大学)、K・ボグダーノフ(ロシア科学アカデミー)、V・イワノフ(UCLA、原稿代読及びスカイプによる参加)、亀山郁夫(名古屋外大)が、文学、文化、美術、映画の諸領域にまたがる基調報告を行い、分科会では、岩本和久と鴻野わか菜が個別の報告を行った。また、基調報告者をメインとするラウンドテーブル「ロシア文化の悲劇をめぐって」(司会:沼野充義)では、ソ連崩壊をきっかけとして顕在化したロシア文化固有の悲劇性はどこに存在するか、をめぐって、主として、文化と国家の相克と共生という視点から議論が交された。ソヴィエト全体主義に対する各自の考え、芸術観、国家観を拠り所として独自の考えが吐露され、総じて、政治あるいは歴史や経済という外的かつ社会状況とのコンフリクトのなかから現象する20世紀ロシアの文学、芸術のアクチュアリティ及びその本質を浮かびあがらせることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題も、3年目を迎えた。本研究は4つのセクションで構成され、各セクションの研究分担者による個別の研究が進められ、おおむね順調に推移してきたが、今年は、定例の研究集会のほか、グローバルシンポジウムと銘打って、国家崩壊に伴うロシア文化の悲劇性を問う国際シンポジウムを開くことができるなど、飛躍的な成果を生むことができたと確信している。特筆されるのは、海外の研究者2名の招聘(基調講演及び分科会討論パネリスト)や、スカイプを利用した海外からの研究者の参加であり、総計述べ7時間にわたる報告、討論の場を設けることができたことで、これは、3年目にして可能になった一大成果と評価できる。また、ラウンドテーブルにおける議論は、これまでのペレストロイカ、グラスノスチ文化に関わる日本での水準を大きく上回るものであると考える。さらに、研究機関である名古屋外国語大学のスタッフからの絶大なサポートを得ることができ、会場には、150名近い参加者が最後まで議論を注視し、質疑応答などを行うことができたことも、併せてこのように評価する所以である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる次年度に向けては、過去3年間の研究を踏まえ、各セクションごとの個別研究のさらなる深化と総合化を図る。「言語文化セクション」では、ソ連崩壊後の文学の動向とその現代的意味について再考する。さらに、同時期の亡命文学者の立場から見たソ連崩壊の姿を検証する。「表象文化セクション」では、ソ連崩壊後の演劇、映画のジャンルにおける方法上の差異や世界観の相違について詳しく検討する。「歴史文化セクション」では、ペレストロイカ期の政治と文化について再検討を加える。「政治文化セクション」では、ソ連崩壊後の政治的混乱と正常化のプロセスにおける種々の改革をめぐって多面的に考察する。以上の研究成果は、関連する学会、また本科研が開催する研究集会等にて発表する。 また、今後の事業としては、1、アンドレイ・シニャフスキー『ソヴィエト文明の基礎』(代表翻訳者:沼野充義)を軸に、ソヴィエト文明の実質をめぐる研究集会を開催するとともに、ソ連崩壊後に書かれた種々の小説をとおして、ソ連崩壊の文化史的意味について考察する。また、歴史文化、政治文化の両セクションとも協同しつつ、昨今、政治問題化しているウクライナ問題をめぐって、これをソ連文化の歴史およびソ連崩壊との文脈においてとらえる国際シンポジウムを開催する。また、可能であれば、本研究が掲げる「ポストグローバル化」という視点そのものの意味についても考えたい。また、これとの関連から、ゴルバチョフ元大統領との直接会見を実現し、ソ連崩壊とウクライナ問題の関係性について意見を聴取したい考えである。また、過去に何度か計画しながら、国家間の関係悪化などからなかなか実現に踏み切れなかった東アジア地域の研究者との連携を図りたい考えである。
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