2011 Fiscal Year Annual Research Report
言語の多様性と認知神経システムの可変性―東アジア言語の比較を通した解明―
Project/Area Number |
23242020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
酒井 弘 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (50274030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬塚 れい子 独立行政法人理化学研究所, 言語発達研究チーム, チームリーダー (00392126)
玉岡 賀津雄 名古屋大学, 大学院・国際言語文化研究科, 教授 (70227263)
今泉 敏 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (80122018)
森田 愛子 広島大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (20403909)
五十嵐 陽介 広島大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (00549008)
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Keywords | 言語学 / 実験系心理学 / 脳・神経 / 認知科学 / 国際研究者交流 / 日本語 / 中国語 / 韓国語 |
Research Abstract |
言語を処理する人間の能力は,生物としてのヒトに共通する脳の神経基盤に支えられているにもかかわらず,世界の言語には驚くほどの多様性が認められる.これを可能にしているのは,言語処理の認知神経システムに言語間の相違に柔軟に対応する可変性が備わっているからであろう.本研究の目的は,東アジア言語の認知神経科学的研究の分野で各国を代表する研究者が国際的に連携することにより,この多様性と可変性の謎を明らかにすることである.今年度は,文の統語構造の処理に韻律が及ぼす影響を探る実験を東京及びソウルにおいて実施し,日本語(東京方言)と韓国語(ソウル方言)の共通点と相違点,さらに,素材とした「属格主語」を有する連体節の構造的特徴に関して貴重なデータを得た.ソウルにおける実験は,ソウル国立大学との共同研究の一環として実施されたものである.中国語と日本語における言語処理の認知神経基盤を探る研究として,中国語を母語とする日本語学習者による日本語文法的アスペクト処理の事象関連電位計測実験を実施した.北京大学における研究協力者がすでに実施した中国語のアスペクト処理に関する事象関連電位計測実験の結果と比較することで,両言語の共通点,相違点,及び第二言語処理に母語が及ぼす影響を明らかにできると考えられる.さらに日本語母語話者を対象とした実験を実施する予定であり,これによって日本語,中国語の母語話者と学習者の比較が可能になる.このほか,科研費によって導入したアイトラッカーの設置及び試験運用を終えるとともに,fMRIによる研究実施のための準備をすすめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文構造に韻律情報が及ぼす影響に関する研究について,東京大学及びソウル国立大学において実験を実施し,日本語と韓国語の比較研究を実施するためのデータを取得することができた.研究成果をとりまとめ,すでに平成24年6月に開催される日本言語学会において研究発表を実施することが決まっている.また,平成24年2月に広島大学において第7回東アジア理論言語学国際ワークショップを開催し,その際に北京大学の研究協力者と打ち合わせを実施することができた.このように,研究の核であるソウル大国立大学,北京大学との連携が順調で,他の研究課題も順調に進展しているので,(2)の評価が適当である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の核である中国及び韓国の研究者との緊密な連携を維持しつつ,個別の研究課題に関しては,柔軟に見直して実験を推進して行く予定である.fMRI研究の実施がやや遅れているため,本年度はそこに重点的にエフォートを配分したい.中国語と日本語の比較研究の担当者としてポスドク研究員を1名,韓国語と日本語の比較研究の担当者としてポスドク研究員を1名,それぞれ雇用することができたため,両研究員を中心に,研究を順調に推進することができると考えている.
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Research Products
(15 results)