2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23242033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永原 陽子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90172551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟屋 利江 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (00201905)
中野 聡 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (00227852)
鈴木 茂 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (10162950)
難波 ちづる 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (20296734)
大久保 由理 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20574221)
今泉 裕美子 法政大学, 国際文化学部, 教授 (30266275)
浅田 進史 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (30447312)
眞城 百華 津田塾大学, 付置研究所, 研究員 (30459309)
石川 博樹 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (40552378)
溝辺 泰雄 明治大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80401446)
愼 蒼宇 法政大学, 社会学部, 准教授 (80468222)
網中 昭世 津田塾大学, 付置研究所, 研究員 (20512677)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植民地 / 植民地兵 / 移動 / 戦争 / 世界史 |
Research Abstract |
2013年度には、①先行研究についての共通理解を得るための研究会の開催、②分担者・連携研究者・協力者による本課題にかんする事例報告研究会の開催、③国内外での史料調査・収集の実施、④文献資料の収集、⑤以上にかんする成果の公開を課題とし、とくに②③に重点をおいて研究を進めた。 ①②にかんし6月22日に会合をもった。分担者愼は、「植民地朝鮮における『戦争』従事経験の継承・移転」と題し、甲午農民戦争からアジア・太平洋戦争(満州抗日戦争を含む)までの日本帝国主義の膨張過程での「戦争」の移転とその従事経験の植民地間移動の見取り図を示した。研究協力者松田素二は「植民地ケニアにおけるKAR(King's African Rifle)の変容」と題し、人類学的な調査研究を基礎に、英帝国の植民地兵であるKARの徴募の地域史的な背景(奴隷身分集団との関連)、都市在住のKAR経験者と出身地域との関係を示し、KAR経験がケニアの諸民族集団の複層的な関係の中で占める位置を明らかにした。 ③④について、分担者網中がリスボン(ポルトガル)の国立公文書館および歴史軍事公文書館で第一次世界大戦期及び第二次世界大戦期の同国領アンゴラ、モザンビークのアフリカ人兵士関係史料、またアンゴラ、モザンビークからマカオ、東チモールへの派兵関係史料の収集を、分担者真城が米国国立公文書館において1940年代、50年代のエチオピア、エリトリアのアフリカ人兵関係史料の収集を、代表者永原がケープタウン(南アフリカ)の国立文書館にて第一次世界大戦期南アのアフリカ人兵の徴募と派兵、帰還についての史料収集を行うとともに、各自が研究文献の収集を進めた。 ⑤については各自の国内学会での発表に加え、11月にアメリカ・アフリカ学会にてエチオピアによるエリトリア併合運動におけるエリトリア植民地兵の役割について発表した。また、ウェブサイトの構築を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は20世紀初めから第二次世界大戦後の脱植民地化期の ①軍人・兵士の移動を通じての戦争と暴力の方式の他植民地への移転とそれによる植民地的暴力の世界的連結の実態、②移動の経験と他植民地出身兵との遭遇が兵士の出身社会の政治過程や社会関係にもたらした意味、③労働者・「売春婦」等の男女が兵士と密接な関係をもちながら植民地間を移動したことによる植民地の社会秩序・構造の変容とそれが各地の脱植民地化過程に及ぼした影響を比較史的に分析し、④これらが脱植民地化の世界史的過程にとってもった意味を明らかにすることを目的としている。 このうち、2013年度までに、日本の東アジア植民地領域間の兵士の移動、沖縄・南洋諸島間を中心とする軍事および労働移動、イギリス植民地体制下の東アフリカおよび西アフリカの地域間移動及びアジアとの間の移動および北東アフリカとの関係、第一次世界大戦期の南部アフリカでの地域内移動およびヨーロッパ・アジアへの移動などについての実証的な研究を進め、同時に、南アジアにおけるイギリスの植民地兵動員やそれに関連した社会変動、ラテンアメリカとアジア間の戦争関連の移動、アフリカ兵のヨーロッパへの動員にかんする研究なども参照して、20世紀の戦争(世界戦争と植民地戦争)に伴う植民地間移動とその社会的影響についての分析を進めてきた。これにより、①②の課題についておおよその見通しを得るところまで到達した。 本研究課題の目標③のうち、女性の植民地間移動にかんする実証研究はこれまでのところ未だ着手できておらず、第4年度の重点課題として取り組むことになる。また、これらの移動の世界史的位置づけに相当する④も、第4年度以降の課題となる。 日程調整上の理由から計画していたワークショップを開催できなかった点は、成果発表の点で問題であった。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、第4年度である今年度以降は、女性を含む植民地出身者の植民地間移動に伴う植民地の社会秩序・構造の変容とそれが各地の脱植民地化過程に及ぼした影響の比較史的分析と、それが脱植民地化の世界史的過程にとってもった意味を明らかにする点に重点をおく。そのために、これまでに蓄積された各地域の事例の相互関係についての検討を進め、植民地の民衆運動の横のつながりを分析するとともに、植民地世界の社会的変容の同時代性についての考察を深め、20世紀の植民地体制の再編と脱植民地化について、「帝国」的視点とは異なる視点から世界史的に把握し、それを歴史像として提示することを目指す。 各自の分担する研究が進展する一方で、とりわけ③④の課題を推進する上で大きな障害になっているのが、各分担者が校務を中心に極度に多忙な状態にあり、研究会開催の日程を調整することがきわめて困難になっている点である。前年度も同じ問題を抱え、改善を目指したが、十分な回数の研究を開催することができなかった。今年度は研究会開催場所や開催形式の工夫を含め、重ねて改善に努めたい。 前年度までの達成点をさらに進め、個別事例の研究を植民地主義と脱植民地化をめぐる世界史の問題へと発展させるために、今年度も共通のテーマに関心をもつ国外の研究者との交流を積極的に進めたい。そのために、各自の海外調査の内容を、史料収集のみでなく研究交流の側面でも強化し、共通する課題で各国の研究者との議論を深め、その成果を報告し合う形の会合を設定したい。 研究成果の報告にかんしては、同じ理由で前年度開催することのできなかったワークショップまたはシンポジウムを開催し、隣接分野の内外の研究者を含めた検討の場を持し、最終年度の成果とりまとめも展望して、残る課題を明らかにしたい。
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Research Products
(29 results)
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[Book] 華北の発見2013
Author(s)
本庄比佐子・内山雅生・久保亨編
Total Pages
355(浅田担当 23-56頁)
Publisher
東洋文庫
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