2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23242033
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永原 陽子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90172551)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟屋 利江 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (00201905)
中野 聡 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (00227852)
鈴木 茂 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (10162950)
難波 ちづる 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (20296734)
網中 昭世 津田塾大学, 付置研究所, 研究員 (20512677)
大久保 由理 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (20574221)
今泉 裕美子 法政大学, 国際文化学部, 教授 (30266275)
浅田 進史 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (30447312)
眞城 百華 上智大学, 公私立大学の部局等, 助教 (30459309)
石川 博樹 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (40552378)
溝辺 泰雄 明治大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80401446)
愼 蒼宇 法政大学, 社会学部, 准教授 (80468222)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 植民地 / 植民地兵 / 移動 / 戦争 / 世界史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究第4年度にあたる2014年度は、植民地における戦争動員と労働者徴募との関係ならびに植民地兵と女性の動員に重点をおいた調査を実施しつつ、前年度までの成果とあわせ、中間報告としての成果報告を進めた。 海外調査としては、アンゴラ=ザンビア・ナミビア間の労働者・女性の移動にかんするアンゴラ国立文書館での調査(分担者網中)、英領植民地における植民地兵と女性の動員にかんするイギリス国立文書館での調査(代表者永原)、アメリカ・フィリピン・東アジア間の兵士移動にかんする聞き取り調査(分担者中野)、ブラジルバイーア州における日本人移民にかんする聞き取り調査(分担者鈴木)、エリトリア・エチオピアにおける兵士の移動と女性の動員にかんする聞き取り調査(分担者真城)、ケニア植民地兵のアジア派兵にかんする調査(分担者溝辺)エチオピア=などを実施した。 成果発表としては、2014年12月には韓国・ソウルにおいて東北亜歴史財団の国際学術会議「植民地責任の清算の世界的動向と課題」を共催し、代表者永原が植民地兵の移動と軍による女性の性的動員にかんする比較史的検討について、分担者粟屋がインドのケースについて報告し、さらに協力者である吉澤文寿・前田朗が東アジア、S・ジェッピーが南アフリカのケースについて、それぞれ報告を行った。また、代表者永原は2014年5月の韓国「チェジュ・フォーラム」で報告を行い、植民地間移動に注目することで植民地主義と脱植民地化を複合的な世界史的プロセスとしてとらえることの可能性を提起し、研究者コミュニティを超えた広汎な聴衆に対し、現代東アジア社会の抱える脱植民地化の問題を再考するための新たな視点を提供することができた。 分担者難波や同溝辺の一連の発表も、兵士・労働者の移動の観点から植民地主義の複合性を浮き彫りにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①軍人・兵士の移動を通じての戦争と暴力の方式(ゲリラ戦、無差別殺戮、性暴力、強制移送など)の他植民地への移転とそれによる植民地的暴力の世界的連結の実態、②移動の経験と他植民地出身兵との遭遇が兵士の出身社会の政治過程や社会関係にもたらした意味、③労働者・「売春婦」等の男女が兵士と密接な関係をもちながら植民地間を移動したことによる植民地社会の社会秩序の変容とそれが各地の脱植民地化過程に及ぼした影響の比較史的分析、④遠隔の植民地の住民が連鎖する植民地的暴力を共有したことが脱植民地化の世界史的過程にとってもった意味の検討、を目的に掲げて研究を進めてきた。 これらのうち、現在までに、①~③について、英領東アフリカ=東南アジア間、南部アフリカ=東アジア間、フランス=インドシナ間、ブラジル=日本間、アメリカ=フィリピン=東アジア間、日本=東南アジア間、日本(=沖縄)=ミクロネシア間南部アフリカ地域圏、東北アフリカ地域圏、東アジア地域圏などにかんする事例研究を進め、実証的な成果を挙げてきている。 また、以上の事例研究の成果の発表についても、多くの国際学会・会議の場で各分担者が発表する形で、国際的に発信して、研究者コミュニティおよび一般社会に対して植民地主義と脱植民地化の歴史ついての新たな理解を提示する点で成果を挙げてきた。 一方、問題点として、第3年度に研究代表者が職場を移ったことおよび各分担者がそれぞれの職場において多忙を極めることのために、本研究メンバー相互の意見交換のための研究会を設定することが極度に困難になっていることである。また、そのために本研究固有のシンポジウム等の開催が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前項で記した本研究のこれまでのところの到達点と問題点を踏まえ、最終年度にあたる2015年度には、個別の事例研究を突き合わせ、上記①~④の課題に即して研究成果をとりまとめていく必要がある。そのためには、ひとまず、時代別(19C後半~20C初頭の植民地体制下、第一次世界大戦期、両大戦間期、第二次世界大戦期、第二次世界大戦後の脱植民地化期)に分けて、植民地兵の動員と移動、それに関連した労働者・女性の動員と移動の問題の位相を整理し、地域的な特質とそれらの相互の連関を明らかにする。次に、アフリカおよび東アジアを「場」として見たときに上記の各時代を通しての特質を明らかにする。これらを通じて、本研究の全体的な取りまとめを行う。 以上の課題に向けて、メンバー間の意見交換のための研究会を開催し、それを踏まえ、 公開の国際シンポジウムを2015年後半を目途に開催し、本研究全体の成果を研究者コミュニティと一般社会に還元する場とする。 その上で、本研究の成果を次期の共同研究につなげることを展望する。
|
Research Products
(42 results)