2012 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀前半のアメリカ合衆国における市民編成原理の研究
Project/Area Number |
23242044
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 泰生 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50194048)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 勝郎 法政大学, 法学部, 教授 (70212090)
増井 志津代 上智大学, 文学部, 教授 (80181642)
荒木 純子 学習院大学, 文学部, 准教授 (20396831)
松原 宏之 横浜国立大学, 人間教育学部, 准教授 (00334615)
橋川 健竜 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30361405)
肥後本 芳男 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (00247793)
佐々木 弘通 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70257161)
森 丈夫 福岡大学, 人文学部, 准教授 (90330894)
中野 由美子 成蹊大学, 文学部, 准教授 (40362214)
久田 由佳子 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (40300131)
金井 光太朗 東京外国語大学, 総合国際学研究院, 教授 (40143523)
|
Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
|
Keywords | 市民 / キリスト教 / 公共 / アンティベラム / アメリカ合衆国 / 連邦政治 / 合衆国憲法 |
Research Abstract |
2012年度は市民編成原理の理解に必要な歴史的視野を磨く研究会をアメリカ太平洋地域研究センター他で多数開催し、19世紀合衆国における市民の権利や義務の内容ばかりでなく、市民社会を成長させる社会的紐帯の生成とその変容の歴史を検討した。具体的には、6月14日ハーヴァード大学歴史学部教授ジェームズ・クロッペンバーグによる報告”Barack Obama and Democracy in America”、6月26日イリノイ州立大学歴史学部教授ジェームズ・バレットによる報告”The Irish Way: Becoming American in the Multi-Ethnic City"、3月11日森本あんり著『アメリカ的理念の身体』(創文社、2012)の合評会などでその問題が議論された。 そこで明らかにされたのは、自律的個人主義の台頭を強調されがちな植民地時代から19世紀前半にかけてのアメリカ社会においても、現代の討議民主主義に繋がる共感と妥協の政治は命脈を保ち、その所産が現代の合衆国政治にも受け継がれていることであった。そして、その共感と妥協を生み出す梃子として、プラグマティックな政治思想の系譜以外に、キリスト教の信仰や道徳観念が果たした役割に理解を深める必要が確認された。権威や権力からの介入を拒むだけの消極的な自由を求めるだけでは公共の問題への虚無的な態度しか育まれず豊かな市民社会の維持は覚束ない。自らが置かれた状況の形成に市民一人一人が積極的に関わる自由を保障する法律他の制度的保証は、そうした文脈でこそ大きな意味を有する。市民としての権利や義務によりひろい意味と役割を与えるその歴史を把握するために、19世紀前半の合衆国社会の理解は必須なのである。 なお、2013年1月のアメリカ歴史学協会年次大会で松原宏之が市民編成原理の研究現況を調査した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究プロジェクト2年目に入り隔月ペースで研究会が開催されるようになった。内外の研究者を招いたワークショップで、アフリカ系アメリカ人ほかの少数者集団の個別的な歴史体験ばかりでなく、それらの諸経験を貫く共通原理の析出にも議論が及ぶようになった。研究分担者である森丈夫、松原宏之らの成果論文の刊行も準備が進み2013年度には刊行の予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も隔月のペースで研究会を開催し、各研究分担者の報告を受けつつ、プロジェクト参加者間の知見の共有を進めると同時に、国内外の研究者との交流をとおして研究視野の拡大を図る。具体的には、5月26日から6月6日にかけて19世紀前半合衆国政治社会史の最も重要な研究者の一人であるオハイオ州立大学教授John Brookeを招聘し、政党と市民の政治参加および市民権をめぐる南北政治の確執などをテーマに連続ワークショップを開催する。とくに6月1・2日に開催されるアメリカ学会年次大会においては初期アメリカ分科会で氏の著作を合評し、本プロジェクトの成果を日本の学界全般に発信する一助とする。8月から9月にかけては、増井志津代、中野勝郎、松原宏之が、それぞれボストン、ワシントンDC、ニューヨークに出張し、公文書館等で史料収集を進め、帰国後その知見を報告する。
|
Research Products
(20 results)