2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23245035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
成田 吉徳 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (00108979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 雄大 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (70509950)
劉 勁剛 九州大学, 先導物質化学研究所, 特任准教授 (70380540)
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Keywords | 人工光合成 / 水分解 / 化学エネルギー変換 / 可視光励起 / 水分解触媒 |
Research Abstract |
可視光、特に、長波長末端付近(700-800 nm)までの全可視光領域の利用においては、光エネルギーが小さく(例えば、1.55 eV@800 nm)なるため、その波長の光を用いて水分解を行うには、励起光エネルギーと水分解酸化還元標準電位の間には僅か0.3 Vしか電位差が無い。このため、この電位差中で作動できる極めて低過電圧で水の酸化反応を可能とする触媒が必須である。そこで、基本的に可視光励起により外部からエネルギーを入れることなく(バイアス電位を適用せずに)光エネルギーだけで自立して水分解を可能とする系の基本設計を行った。光励起色素として三重項寿命が長く、配位子を調節することにより長波長域まで光吸収が可能となるルテニウムビピリジン錯体と本研究者代表者らが開発したマンガンポルフィリン二量体を水分解触媒とする組み合わせにより色素増感太陽電池と類似のシステムとして試行した。 (1) 酸化チタンナノ粒子上への固定のためのアンカー基の選択 当初、色素増感太陽電池で用いられるカルボキシル基置換ビピリジンを配位子とするトリス(ビピリジン)ルテニウム錯体を用いたが、水溶液中では容易に酸化チタン粒子表面から解離するため、アンカー基をリン酸基としたところ酸化チタン粒子表面に安定した修飾が可能となった。 (2)色素-水分解触媒修飾光応答電極の作製と光化学的水分解反応 これらを酸化チタンナノ粒子を固定した導電性電極上へ修飾した電極を作用電極(陽極)とし、白金電極を対極(陰極)に用いて光反応セルを作成した。各種のpHの水溶液中で作用電極への光照射により水分解による連続的な光応答電流の観測に成功した。また、光照射後に、反応セルのヘッドスペースガスの分析により、酸素・水素の発生も確認できた。本色素増感型水分解光触媒電極の基本設計が適切であり、今後、この方針に従い推進することが妥当であるとの結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多くの既知の色素増感型の人工光合成系(例えば、Moore et al., JACS 2009, 131, 926; Spiccia et al., idem., 2010, 132, 2892)ではバイアス電位が必要であったり、紫外光や可視部短波長域光しか利用できない、短時間の照射で失活するなど様々の課題があった。本研究ではバイアス電位を必要とせず、太陽光のみでの自立した「人工光合成系」の構築を可能とし、550 nmまでの可視光照射で数時間安定して水分解による光電流が観測された。これは従来の色素増感型水分解電極の性能を大きく凌駕しており、本分野における大きな進歩につながる。この光応答水分解電極の作製を可能とした背景には、用いる水の酸化分解触媒が低過電圧でかつ大きな触媒回転速度を持つことが挙げられる。独創的なマンガンポルフィリン二量体触媒の人工光合成系における有用性が立証されたことと併せて当初の課題解決に大きく進むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究においては、比較的構造が単純なルテニウムビトリスピリジン錯体を用いた。この錯体の主たる光吸収領域は550 nmまでであり、全可視光利用にはまだ不十分である。一方、長波長域までの光吸収を可能とすると、錯体酸化体は酸化電位が低下する(即ち、酸化力が弱くなる)ことにより、水の酸化触媒を円滑に酸化できなくなる可能性がある。そこで、長波長域までの光吸収が可能なルテニウムビスビピリジンジイソシアネート錯体(通称、N3色素)を基本骨格とすることにより650 nm付近までの光吸収が可能となり、利用可能波長域の長波長化が可能となる。次年度以降は次の各点について研究を進める: (1) 正確なIPCE値測定、(2) 生成ガスとファラデー効率の定量、(3) 過渡吸収測定による色素―触媒分子間の電子移動速度の解析、(4) 長時間の連続反応における耐久性。以上の検討は酸化チタンナノ粒子表面に色素、触媒を無秩序に修飾するが、当初の研究計画にあるように、色素-触媒二元錯体を合成することにより、電子移動の方向が規制でき、逆電子移動を抑制するスペーサー分子の挿入により分離された正電荷の水の酸化への有効利用を可能とすることにより、より高効率での人工光合成系の構築を進める。
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Research Products
(26 results)