2011 Fiscal Year Annual Research Report
気液界面の分子動力学と分子気体力学の包括的統合による非線形非平衡流体力学の新展開
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23246034
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
矢野 猛 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60200557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 一生 京都大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10115777)
高田 滋 京都大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (60271011)
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Keywords | 気液界面 / 分子動力学 / 分子気体力学 / 非平衡統計力学 |
Research Abstract |
非線形非平衡流体力学の基盤創成のために、分子動力学と分子気体力学を用いた理論解析と数値解析を行い、下記のような成果を得た:1.凝縮相と接する蒸気の非定常運動に対する一般的な定式化を、Boltzmann方程式の境界値問題の厳密な漸近解析をとおして実行し、気体の運動を支配する巨視的方程式系とこれの解を決定するための巨視的境界条件の系を導出し、それらの数学的構造を明らかにした。とくた、非定常なKnudsen層の境界値問題が、線形理論の枠組みの中で、適切な変数変換によって定常問題に帰着することを見出したことによって、理論的に厳密な取扱いが可能となったことは重要である。さらに、高次の効果としてエネルギーの非等分配性がどのようにして巨視的方程式系に組み込まれてゆくかなども明らかになっている。2.線形Boltzmann方程式に内在する双対性に関する理論的研究を推し進めて、定常問題のみならず、緩和現象に代表されるゆっくりと変動する非定常問題においても、双対性を利用した現象の深い理解が可能であることを明らかにした。3.ナノスケールの液柱の静止状態の力学的特徴を、分子動力学計算によって、詳細に調べた。これによって、液柱の表面の2つの主曲率に対応する2つの異なる表面張力が定義され得ること、静止液柱の安定性が巨視的流体力学に基づく中立限界によって予測できることなどが明らかになった。本成果は、気液界面近傍と液体側内部の微視的分子運動が支配する巨視的な力学の一層の理解のために、今後有効に活用され得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画のとおり、本研究初年度に予定されていた、分子気体力学による非平衡現象の数理的理解の蓄積と分子動力学による界面現象の統計物理学的理解の蓄積のために有用な成果を得ることができた。これらの成果は、次年度以降の研究計画の進展の基礎として十分なものである。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では計画遂行にとって大きな障害はない。当初計画どおり、分子気体力学解析と分子動力学解析を実行し、気液界面の非線形非平衡流動現象の統一的理解を深め、これを応用に資する理論体系の形に定式化することを目指す。
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Research Products
(5 results)