2013 Fiscal Year Annual Research Report
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23247002
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
菱田 卓 学習院大学, 理学部, 教授 (60335388)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | DNA損傷トレランス / DNA損傷 / Mgs1 / 出芽酵母 / DNA相同組換え |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内では、外的・内的環境に由来する様々な因子によってDNA損傷が常に発生しており、生物は慢性的なDNA損傷ストレスに対する耐性能力を獲得することで様々な環境に適応してきた。本年度は、低線量率の紫外線照射下で酵母細胞を培養可能な実験系を用いて、DNA損傷トレランスの制御機構の解析及び、慢性的なDNA損傷ストレスに対する代謝調節も含めた耐性獲得に関わる新規メカニズムの解明を目指して研究を行った。 損傷トレランス経路の制御因子Mgs1の機能解析:Mgs1は大腸菌からヒトまで高度に保存されたタンパク質である。今回N末及びC末領域のドメイン解析を行った結果、真核生物にのみ存在するN末領域内のUBZドメインはユビキチン化PCNAとの相互作用に関与しており、DNAクランプであるPCNAのユビキチン化を介したDNA損傷トレランス経路の阻害を引き起こすことが示された。一方、バクテリアからヒトまで保存されたC末領域は、DNA相同組換え経路の制御に関与していることが明らかとなった。さらに、N又はC末ドメインを欠損した変異体は、いずれもDNA結合とATP加水分解に関して野生型と同程度の活性を持ち、両経路の制御は共にMgs1が持つATP加水分解反応に依存していた。また、DNA損傷トレランス機構の阻害にはC末領域を必要とする一方で、DNA相同組換え経路の制御はN末領域を必要としないことが明らかとなった。これらの結果は、DNA相同組換えの制御が原核から真核生物まで保存されたメカニズムであることを示唆している。 mgs1 rad18の合成致死性を抑圧する多コピーサプレッサーをスクリーニングした結果、翻訳制御やリボソーム生合成、オートファジー、アクチン制御等の代謝反応に関与するTOR2遺伝子及びTORシグナル関連因子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、複製フォークの進行阻害の解消に関与するDNA損傷トレランスの制御機構を明らかにするため、研究代表者が単離・命名した出芽酵母Mgs1の機能解析を中心に解析を行った。Mgs1は生物種を超えて高く保存されている一方で、どの生物種においてもその破壊株は顕著な表現型を示さないことから、その働きについては不明であった。今回、DNA損傷応答関連の変異株との組み合わせや、Mgs1の過剰発現及び部分欠損変異体などを用いた解析から、Mgs1はDNA複製ストレス時のDNA損傷トレランスとDNA相同組換えの制御をMgs1が持つ異なるドメインによって行っているという興味深い結果を得ることができた。さらに、Mgs1と様々なストレス刺激に応答した代謝機能調節に関与するTOR複合体との関連性を見いだしており、これらはMgs1の機能の解明及び複製ストレス刺激に応答した代謝機能調節の理解につながる重要な知見であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Mgs1による損傷トレランスと相同組換え経路の制御機構についてさらに詳細な解析を行い、ゲノムの安定性を維持しつつ複製ストレスの解消と完了を保障するメカニズムを明らかにする。特に、Mgs1の各ドメイン変異体の解析をすすめ、変異株、過剰発現株、精製タンパク質を用いて遺伝的及び物理的相互作用因子の同定を進める。 TORシグナルの亢進がmgs1 rad18の合成致死性を抑圧する仕組みについて、TOR関連因子の過剰発現株や様々な変異体を作製し詳細に解析する。
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Research Products
(7 results)