2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23248046
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古瀬 充宏 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (30209176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友永 省三 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (00552324)
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Keywords | ストレス / 脳 / ニワトリ / キヌレン酸 / トリプトファン / ピペコリン酸 / リシン / モノアミン |
Research Abstract |
ストレスは家畜における生産性の低下につながるが、ニワトリヒナにおける単離ストレス誘導性の活動量の亢進はアミノ酸の一部により軽減される。しかし、作用機序に関しては不明な点が多かった。そこで、まず、L-トリプトファンの代謝に着目し、中でも単離ストレスによる行動変化に及ぼすキヌレン酸の影響を明らかにすることを目的とした。群飼状態の卵用種雄ヒナ(5日齢)の側脳室にトリプトファンとその代謝産物であるキヌレニン、キヌレン酸ならびにセロトニンを投与し、その直後から単離ストレスを負荷し、行動に及ぼす影響を調べた。セロトニシに鎮静効果、キヌレン酸に催眠効果が認められた。効果が認められたキヌレン酸と同等の投与量ではトリプトファンに鎮静・催眠効果は認められなかった。以上より、トリプトファンがキヌレン酸に代謝されることにより強い抗ストレス効果を発揮する可能性が示唆された。次に、L-リシンの脳内特異的代謝産物であるL-ピペコリン酸に着目した。L-ピペコリン酸が鎮静・睡眠作用の中心的役割を果たすことは既に明らかであるが、その作用機序は一部しか解明されていない。本研究では、鎮静・睡眠作用を持つL-ピペコリン酸がモノアミンならびにアミノ酸の代謝に及ぼす影響を明らかにすることを目的として検証を行った。行動観察および鳴き声において、「活発に鳴いている」というストレス様行動がL-ピペコリン酸投与で有意に減少した。しかし一方で、L-ピペコリン酸の投与量による明確な影響は確認されず、各L-ピペコリン酸投与群は互いに同程度の鎮静・睡眠作用を呈した。さらに、どのモノアミンならびにアミノ酸においても対照群と各L-ピペコリン酸投与群の間に有意差は見られなかった。トピペコリン酸の投与は脳内のモノアミンとアミノ酸代謝に影響を及ぼさない可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新規アミノ酸栄養学の構築という点で、遊離アミノ酸ならびにその代謝産物の機能の解明を進めている。今年度の課題に並行して、L-セリンやL-アスパラギン酸の機能を探索した。L-セリンに関しては脳細胞外液のL-アラニンを高め、タウリンを減少させる作用があることが見出された。また、L-セリンにはうつ状態発症との関連が示唆された。L-アスパラギン酸とその異性体であるD・アスパラギン酸には強いストレス化においても鎮静効果を発揮することが明らかとなった。このように多くの知見を得ることが出来たため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、トリプトファン代謝において重要なカギを握ることが判明したキヌレン酸の測定技術の確立を進めている。方法が確立することにより、ストレス化における脳のトリプトファン代謝の全容が明らかになる。特に、うつモデルラットに鶏卵を与えることで、うつ状態が改善し、その際、前頭前野のトリプトファンが増加することを見出している。セロトニン含量に違いがなかったことから、キヌレン酸への代謝が重要と考えている。一方、リシンの代謝産物であるサッカロピンとアミノアジピン酸に関しては溶解度が非常に低いために投与実験が出来ない状況にある。現在溶解度を高める方法を模索中である。
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Research Products
(16 results)