2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23248046
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古瀬 充宏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30209176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安尾 しのぶ 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30574719)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ストレス / 脳 / キヌレン酸 / トリプトファン / セリン / うつ / アスパラギン酸 / D型アミノ酸 |
Research Abstract |
ストレスは家畜における生産性の低下につながるが、ニワトリヒナにおける単離ストレス誘導性の活動量の亢進はアミノ酸の一部により軽減される。しかし、作用機序に関しては不明な点が多かった。そこで、まず、アスパラギン酸に着目し、中でも単離ストレスによる行動変化に及ぼすL-およびD-アスパラギン酸の影響を明らかにすることを目的とした。群飼状態の卵用種雄ヒナの側脳室にストレス反応の起点となる副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンとL-またはD-アスパラギン酸を投与し、その直後から単離ストレスを負荷し、行動に及ぼす影響を調べた。両アスパラギン酸に鎮静効果は認められるものの催眠効果はL-アスパラギン酸のみに認められ、作用機序が異なる可能性が示唆された。一方、L-セリンの経口投与により脳内のL-セリンが増えるばかりか、D-セリンも徐々に増加することが確認された。このL-セリンがうつ様行動において重要な鍵を握ることも明らかになった。それは、うつ病モデル動物であるWistar Kyotoラット (WKYラット)とその対照群であるWistarラット (WISラット)を比較したところ、多くの脳部位と血漿においてWKYラットでL-セリンが低いことである。さらに、セリンとホモシステインから合成されるシスタチオニンもWKYラットで低いことが確認された。現在、うつ病の発症原因としてモノアミンの代謝異常が注目されているが、アミノ酸代謝の側面からも原因追及をする必要性が提示できた。また、現在アトピー性皮膚炎などにおいて引っ掻き行動が皮膚の状態をさらに悪くするという点が問題とされているが、引っ掻き行動の緩和と脳内のアミノ酸代謝に一部関連がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新規アミノ酸栄養学の構築という点で、遊離アミノ酸ならびにその代謝産物の機能の解明を進めている。今年度のキヌレン酸の課題に並行して、L-セリンやL-アスパラギン酸の機能を探索した。L-セリンに関しては経口投与により血漿と脳の水準が増加するが、その際にグルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体に結合するD-セリンに一部が代謝されることが見出された。また、L-セリンに関連したアミノ酸代謝がうつ状態発症との関連が示唆された。L-アスパラギン酸とその異性体であるD-アスパラギン酸には強いストレス化においても鎮静効果を発揮するが、催眠作用において機能が異なることも明らかとなった。このように多くの知見を得ることが出来たため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
キヌレン酸がどのようなメカニズムで鎮静・催眠作用を発揮するのかについて検証を行う。当初に掲げたL-リシンの代謝産物であるL-ピペコリン酸に関しては遺伝的背景により作用強度が異なることを見いだし、メカニズムの解明を図る。グルコースは脳内で可欠アミノ酸の基質となりうるが、脳におけるグルコースによる鎮静・催眠効果とアミノ酸代謝との関連を明らかにする。うつ病モデル動物であるWKYラットが脳内セリン含量の低さを見せたことから、セリンの投与がうつ状態の改善に有効かを検証し、その機構解明にも努める予定である。また、脳内の遊離アミノ酸の日内変動をマイクロダイアリシス法で明らかにすることと、行動量に違いが認められる2系統の脳内アミノ酸代謝に及ぼす明期・暗期の影響も調査する予定である。
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[Presentation] Antidepressant-like effects of acute and chronic L-serine treatment in Wistar and Kyoto rats2012
Author(s)
Nagasawa M, Ohtsuka T, Togo Y, Yamanaga M, Yoshida J, Yamasaki I, Uotsu N, Teramoto S, Yasuo S, Furuse M
Organizer
International Conference and Exhibition on Nutraceuticals and Functional Foods
Place of Presentation
Hawaii, USA
Year and Date
20121201-20121206
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